当初計画されていたin vitro及びin silicoでの分散型反復配列のAlu配列挿入箇所の研究は、昨年報告した理由で、Alu配列についての研究継続を断念した。 一方、昨年報告したように、個人間でも両集団間でも識別力の高い約45のSTRs座位を選択すれば、識別可能であると考えられた。それを利用して、5色の蛍光標識プライマーを用いたマルチプレックスシステム(各約20座位)を作製すれば、比較的遺伝的に近いヒト集団でも個人もヒト集団も識別可能であろうことが示唆された。この結果は、国際学会で発表及び外国誌に掲載され、今後国内学会での発表も予定している。 また、コンピュータワークに優れた研究者を雇用して、DDBJに含まれる1000人ゲノムプロジェクトの全ゲノム塩基配列データから、STRsを抽出できるGangSTRやLobSTRソフトウエアを利用して、218座位のSTRsの遺伝型抽出を試みた。しかし、GangSTRによる重複解析の結果は正確ではないことがわかり、LobSTRは、WEB上から消失したので、in silicoでのSTR解析は中断せざるを得なかった。 そこで、最近注目されているマイクロハプロタイプ(MH)に着目した。1000人ゲノムプロジェクトのデータから日本人においてSNPsが2~4個ある259座位のMHについて、日本人(JPT)105人及び中国人(CHB)102人のハプロタイピングを行った。両集団の各MHのハプロタイプ頻度を算出し、ヘテロ接合度をもとめた。各SNPs数におけるJPT及びCHBのヘテロ接合度の平均値は、全て約0.5以下で、SNPsが多いマーカーほど高い値を示す傾向が見られた。また、両集団間の各MHのアレル頻度分布の有意差検定を行ったが、差はほとんど見られなかった。従って、MHは、遺伝的に近いと考えられる集団や個人の識別力はSTRよりも低いことが示唆された。
|