研究課題/領域番号 |
17H04152
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
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研究分担者 |
李 ヨキン 日本大学, 医学部, 准教授 (30599048)
中山 渕志 日本大学, 医学部, 助手 (40793401)
風間 智彦 日本大学, 医学部, 助手 (80525668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生医学 / 脂肪細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
①変形性膝関節症(0A)の病態生理に対するヒトDFATの作用メカニズム解析 「OA患者から調製したDFATの形質解析」では、同一OA患者に由来する皮下脂肪由来DFAT(SC-DFAT)、脂肪組織由来幹細胞(SC-ASC)、膝蓋下脂肪体由来DFAT(IFP-DFAT)を調製し、その形質や多分化能を比較検討した。その結果、3種類の細胞は共にCD73、CD90,CD105陽性で脂肪、骨、軟骨への多分化能を示し、間葉系幹細胞(MSC)の最小基準を満たすことが明らかになった。また軟骨分化能の比較を行った結果、誘導した軟骨様細胞塊の組織学的検討では、軟骨特異的プロテオグリカンであるAggrecanの発現強度がIFP-DFATで強い傾向にあり、また硝子軟骨の細胞外マトリックスの主成分であるII型コラーゲン遺伝子(COL2A1)の発現は、SC-DFATに比べIFP-DFATで有意に高かった。「滑膜線維芽細胞との共培養実験」では、OA患者または健常者に由来する滑膜線維芽細胞をTNF-alpha刺激し、発現する炎症性サイトカインの遺伝子発現変化を検討した。その結果、どちらの細胞もTNF-alpha刺激によりIL-6、IL-8、MMP9等の炎症性サイトカインの発現が亢進することが明らかになった。現在、DFATやASCとTNF-alpha刺激した滑膜線維芽細胞との間接的共培養を行い、その遺伝子発現変化を検討中である。 ②変形性膝関節症モデルを用いたDFATの治療効果 膝前十字靱帯切離と内側半月板切除によるラットOAモデルを作成し、経時的に膝関節軟骨の変形の程度を評価した。その結果、傷害5週間後より肉眼的、組織学的に硝子軟骨の変性・消失が認められ、13週間にわたって持続することを確認した。このOAモデルの膝関節内にラットDFATまたはコントロールとしてPBSを1週間毎に計4回投与し、その治療効果を移植5週間後に比較検討する実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「OA患者から調製したDFATの形質解析」では、本年度の到達目標である同一ドナーに由来する3種類の細胞(SC-DFAT、SC-ASC、IFP-DFAT)の軟骨分化指向性や細胞外マトリックス産生能を検討しその性能差を明確にすることができた。また「滑膜線維芽細胞との共培養実験」では、滑膜線維芽細胞株の選定やTNF-alphaの至適濃度等の条件設定を完了し、本実験を開始するに至った。「変形性膝関節症モデルを用いたDFATの治療効果」では、膝前十字靱帯切離と内側半月板切除による再現性の高いOAモデルの作出に成功し、細胞移植実験を開始することができた。以上より、本年度の到達目標は概ね達成されており、順調に進捗していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
「OA患者から調製したDFATの形質解析」では、上記3種類の細胞(SC-DFAT、SC-ASC、IFP-DFAT)に膝蓋下脂肪体から調製したASC (IFP-ASC)も加えて、それぞれの細胞のOA治療に関する性能を評価する。具体的にはそれぞれの細胞を炎症性サイトカインであるTNF-alphaやIFN-gammaで刺激し、免疫制御、抗炎症、鎮痛などに作用するサイトカイン群の発現変化を比較解析し、各細胞の性能の差異を明確にする。「滑膜線維芽細胞との共培養実験」では、前年度に引き続き4種類の細胞(SC-DFAT、SC-ASC、IFP-DFAT、IFP-ASC)とTNF-alpha刺激した滑膜線維芽細胞との間接的共培養を行い、各細胞の滑膜線維芽細胞からの炎症性サイトカインや細胞外マトリックス分解酵素の分泌抑制作用を比較解析する。「変形性膝関節症モデルを用いたDFATの治療効果」では、前年度に移植を行ったDFAT群とControl群の軟骨病変を肉眼的・組織学的に評価し、OAに対するDFAT関節内注射の治療効果を明らかにする。さらにGFPラベルしたDFATをこのラットOAモデルの膝関節内に注射し、移植したDFATの形質や局在変化を検討することにより、治療効果の作用機序を明らかにしていく。
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