研究課題/領域番号 |
17H04159
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
飯島 英樹 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90444520)
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研究分担者 |
井上 隆弘 大阪大学, 医学系研究科, 特任講師(常勤) (30648184)
新崎 信一郎 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (60546860)
林 義人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80647123)
辻井 芳樹 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80795170)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腸管免疫 / NSAIDs / CCR7 / IL-22BP |
研究実績の概要 |
CCR7(C-C chemokine receptor type 7)は腸管粘膜固有層から腸間膜リンパ節へのリンパ球の遊走を制御するケモカインレセプターであるが、CCR7欠損マウスと野生型マウスに対して、インドメタシン皮下投与によりマウス小腸粘膜傷害を誘導したところ、CCR7欠損マウスでは野生型マウスに比して小腸の潰瘍面積が有意に広く、組織学的な炎症スコアも有意に高いことが確認された。一方、両群で粘膜欠損部の個数には差を認めなかった。この腸管粘膜の炎症増悪に関わる原因として昨年度より腸管での抗菌物質産生やバリア機能に関与し、主に自然リンパ球(Innate lymphoid cell;ILC)から産生されると考えらえているIL-22に注目して検討を行っているが、腸管粘膜固有層や腸間膜リンパ節単核球におけるIL-22発現はCCR7欠損マウスと野生型マウスでは差を認めなかったが、IL-22に拮抗的に働くとされるIL-22 binding protein(IL-22BP)の発現はCCR7欠損マウスにおいて野生型マウスに比して有意に発現量が高く、CCR7欠損マウスでは相対的にIL-22の機能が低下していることが示唆された。他のTh1, Th17型などの腸管炎症に関わるとされるサイトカインの解析では両群に有意な差を認めなかった。CCR7欠損マウスでは野生型マウスに比べCD103+CD11c+樹状細胞におけるIL-22BP産生が有意に増加しており、主な産生細胞と考えられた。これらの結果から、本NSAIDs誘発性小腸粘膜傷害マウスモデルではIL-22を産生するILCよりもCD103樹状細胞からのIL-22抑制が病態に関与することが示唆された。また、昨年度に引き続き、ヒト炎症性腸疾患やNSAIDs起因性小腸粘膜傷害の患者検体の収集を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCR7欠損マウスにおける病態の解明が進んでおり、ほぼ順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
CCR7欠損マウスあるいは野生型マウスからCD103+樹状細胞を採取し、野生型マウスに移入した上でNSAID誘導性小腸粘膜傷害を作成し、IL-22BP高産生性のCD103+樹状細胞のマウス腸炎形成への関与を解析する。小腸粘膜傷害誘導マウスより腸内容物を採取し、メタゲノム解析により腸内細菌叢を対比することで粘膜免疫機構と腸内微生物叢の相関性を明らかにする。我々の先行研究において炎症性腸疾患の血漿中で増加する脂質分画であるlysophosphatidyl serine (Lyso PS)をマウスに投与するとAhRの発現は有意に低下した。LysoPSのAhR発現制御の機序やAhRの変化後のIL-22をはじめとする免疫制御蛋白の発現変化は不明であり、AhRを介する生体内リガンドの探索及びその生体機能への影響を解析する。さらに、昨年度に引き続き、NSAIDs腸炎患者および炎症性腸疾患患者から経時的に糞便の収集を継続し、回収した糞便はメタゲノム解析に供し、疾患活動性との関連や腸管免疫機構との関連を解析する。
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