研究課題/領域番号 |
17H04163
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高山 哲治 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10284994)
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研究分担者 |
武藤 倫弘 国立研究開発法人国立がん研究センター, 社会と健康研究センター, 室長 (30392335)
堀本 勝久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副研究センター長 (40238803)
岡本 耕一 徳島大学, 病院, 講師 (60531374)
六車 直樹 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (90325283)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大腸腺腫 / SSA/P / オルガノイド / 予防薬 |
研究実績の概要 |
昨年度は、大腸腺腫組織、SSA/P組織、及び正常粘膜組織より得られた遺伝子発現プロファイルをもとにConnecitivity map解析を行い、既存の6000種類の薬剤の中から腺腫やSSA/Pに抑制的に作用する薬剤をそれぞれ30種類抽出した。また、前癌病変である腺腫やSSA/Pのオルガノイドを樹立し、薬剤のスクリーニングを行うことによりこれらに抑制的に作用する薬剤をそれぞれ5つほどに絞り込んだ。 以上の結果をもとに、今年度は、新たに腺腫10症例、SSA/P 10症例のオルガノイドを樹立し、これらの予防候補薬剤の抑制効果を検証した。その結果、腺腫に対してはA, B, C, Dの4つの薬剤が、正常オルガノイドに比べて強い抑制効果を示した。同様に、SSA/Pに対してはE, F, Gの3つの薬剤が正常オルガノイドに比べて強い抑制効果を示した。 これらのin vitroの実験結果をもとに、次に動物を用いて以下の2つの実験を行った。 1) azoxymethane-DSS誘導ラット発癌モデルを用いて、A, B, C, Dの薬剤(または溶媒のみ)をそれぞれ15週間経口投与し(それぞれn=3)、屠殺して腺腫の数、頻度、大きさ等々を評価した。その結果、薬剤Aの投与群ではもっとも強く腺腫の発生を抑制することが明らかとなった。同様に、APC欠損マウスに薬剤Aまたは溶媒のみを経口投与し、4ヶ月後にマウスを屠殺して大腸及び小腸のポリープ(腺腫)数、頻度、大きさなどを評価したところ、治療群では対照群に比べて明らかにポリープの数は減少した。SSA/Pについては、適切な動物モデルがないため、SSA/PオルガノイドをSCIDマウスの大腸に同所移植を行い、SSA/P治療評価モデルになるかどうかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸腺腫に対する予防薬開発の実験は、azoxymethane-DSS誘導大腸発癌ラット及びAPC欠損マウスを用いて概ね順調に進んでいる。つまり、4つの薬剤の中で薬剤Aが動物の大腸腺腫を抑制することが示され、次の実験に進めると考える。一方、SSA/Pのin vivo実験については、ヌードマウスに移植しても生着率が低く、現在SCIDマウスを用いて、移植モデルを作成中である。SSA/Pオルガノイドの移植ができれば、E, F, Gの3つの薬剤を投与して抑制効果を検証できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定は以下の通りである。 1.azoxymethane-DSS誘導大腸発癌モデルを用いた予防効果の検証:今年度はn=3で各種薬剤(A, B, C)の予防効果を検討したが、今後は薬剤 Aにしぼり、種々の投与スケジュール(期間、容量など)で腺腫に対する抑制効果を検証する。 2.APC欠損マウスモデルを用いた予防効果の検証:多数のAPC欠損マウスを用いて、薬剤Aを種々の期間、種々の容量で投与し、腺腫に対する抑制効果を調べる。 3.Pathway解析: 上記の動物実験において、薬剤A投与群と溶媒投与群の大腸組織よりRNAを抽出し、マイクロアレイ解析などを行うことによりpathway解析を行い、薬剤Aによる抑制機序を調べる。 4.SSA/Pのxenograft マウスモデルの作製:SSA/Pより樹立したオルガノイドをSCIDマウスの大腸に移植し、モデルマウスを作成する。 5.SSA/P xenograftマウスモデルを予防効果の検証:SSA/Pのxenogtaftモデルマウスに予防候補薬E, G, Fをそれぞれ投与し、SSA/Pの大きさを評価することにより、抑制効果をin vivoで評価する。また、もっとも効果の高い薬剤については、N数を増やして予防効果を検証する。
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