今後の研究の推進方策 |
モデルマウスではヒト疾患に類似した肝障害や腸管透過性亢進、高エンドトキシン血症を呈するが、このマウスに安定同位体である重水素で標識したコリン(Choline-d13 bromide-(N,N,N-trimethyl-d9,1,1,2,2-d4))を注射してその体内動態を解析する。 安定同位体標識コリンを用いればTMAやTMAOに変換されてもLC/MSで標識分子の変化を精密にトレース(標識由来の分子はピークが異なることで区別できる)でき、アイソトープではできない解析が可能となる。具体的には重水素標識コリンをマウスに注射後糞便を採取して腸管内に標識コリンが漏れ出てきているか、腸管内で血管由来のコリンから腸内細菌がTMAに変換しているかをLC/MSで検討する。次に注射した標識コリンが腸管内から再び血管内に入り肝臓にしかない酵素でTMAOに変換されたかどうかはマウスの血清サンプルのLC/MS解析で検証できる。血液中のコリンが腸管内に漏れ出て腸内細菌でTMAに変換され肝臓でTMAOになることが実証されればこれまでにない機序(=腸管内から血管内への移行ではなく、血管内から腸管内への物質の移行)という点で極めて新規性が高い知見となり、その学術的意義は大きい。
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