研究課題/領域番号 |
17H04168
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
考藤 達哉 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究センター長 (80372613)
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研究分担者 |
西田 奈央 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (50456109)
田中 純子 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (70155266)
小松 陽樹 東邦大学, 医学部, 助手 (80424711)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | B型肝炎 / ワクチン / HBs抗体 / 乾燥濾紙法(DBS法) / カンボジア / 母子感染 / ゲノム / ワクチンエスケープ変異 |
研究実績の概要 |
S大学保健管理センターにおける学生(3755名)および再接種を行った職員(447名)のワクチン接種記録を解析した。10年間抗体を維持した症例の95.7%は初回接種で高抗体価を獲得していた。HBs抗体獲得群では、B細胞系列の抗体産生細胞への分化、TFHの活性化が認められ、抗体価と接種前の血清IFNγ、CXCL9に有意な相関を認めた。HBs抗体価の長期維持には接種前免疫環境が関与する可能性が示唆された(考藤)。 乾燥濾紙血法 (Dried Blood Spot、DBS法)を用いたゲノム解析の技術基盤を開発した。3種類のDBS法と3種類のゲノムDNA抽出キットとの組み合わせを検討した結果、HemaSpotとスマイテストEX-R&Dの組み合わせにおいて、ゲノムDNAの収量が最も多かった(西田)。 2016-2017年にWHO WPRO、WHOカンボジア、カンボジア王国保健省、アメリカCDCと共同で「カンボジア王国における全国調査」を実施し、その中で4,540人(5~7歳児2,517人とその母親2023人)全4,540検体に対し、DBSを用いてHBVマーカーを測定した。その結果HBs抗原陽性率は小児0.5%、母親4.7%であり、HBc抗体陽性率は小児3.3%、母親27.9%、HBs抗体陽性率は小児30.9%、母親33.0%であった(田中)。 B型肝炎母子感染予防不成功例において、S抗原変異株(ワクチンエスケープ株/G145R等)の有無をサンガー法と次世代シークエンス法を用いて検討した。Majorクローンだけではなくminorクローンとして存在するS抗原変異株も母子感染予防不成功に関与している可能性が示唆された(小松)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健康成人を対象としたHBワクチン接種において、HBs抗体獲得、高抗体価の維持、更に追加接種(Booster)時の免疫反応の機序を明らかにした。DBS法を用いたゲノム解析では、血液サンプルの採取およびゲノムDNAの抽出において、最適なキットの選択と実験条件の選定が完了した。カンボジアでの研究に関しては、H30年度に実施予定であるHBV感染患者を対象としたゲノム解析の準備が整っている。DBSの精度評価および小児と母親4,540人のDBS検体の肝炎ウイルスの免疫血清学的測定を行った。HBワクチンによる母子感染予防不成功例の検討では、約40例を解析中であり、DBS検体からHBVの系統樹の解析を行っている。血液以外の生体試料を用いたウイルス遺伝子解析方法も検討中であり、S抗原変異株の新しい病態の解明が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
HBワクチン接種後の抗原特異的な免疫応答(濾胞性T細胞、抗体産生細胞など)の評価方法を確立し、HBワクチン反応性と不応性に関する詳細な解析を継続する予定である。今年度確立したHemaSpotとスマイテストEX-R&Dの組み合わせ を用いて、HBV感染患者の血液からゲノムDNAの抽出を行う。抽出したゲノムDNAのQualityを評価するとともに、TaqMan法によるSNPタイピング、PCR-Luminex法によるHLAタイピングを実施する。カンボジア研究では、HBV/HCV 遺伝子解析を行い、genotype の決定とfull genome 塩基配列の解析 (HBV/HCV に持続感染している母児について感染経路の解明)を行う。HLA-DP, DQアリルを含む遺伝要因のタイピングなどゲノム解析を行う。母子感染予防不成功の症例数をさらに増やして検討を行う。さらに、ウイルス遺伝子変異の新たな病態解明を目的として、検体採取が容易である爪や毛髪を用いたウイルス遺伝子解析を行う予定である。また、母子感染予防不成功例においてワクチンエスケープ変異株がいつから出生児に出現するのか不明であり、出生時に保存されている乾燥臍帯を材料としてエスケープ変異株の起源の解明を行う予定である。
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