研究課題
HBワクチン応答性の解析(考藤):S大学保健管理センターにおける学生(3755名)および再接種を行った職員(447名)を対象に、HBs抗体消失例に対するBoosterワクチンの効果に関して検討した。BoosterワクチンにてHBs抗体価の再上昇を認めた群ではB細胞系列の活性化を認めた。また初回とBooster時とワクチン種別を変更した群でHBs抗体獲得率が向上した。カンボジアにおけるDBS法を用いた感染状況調査(田中):「カンボジア王国における全国調査」を実施し、4,540人を対象に乾燥濾紙血法(DBS)による血液採取を行いHBVマーカーを測定した。HBs抗原陽性率は小児0.5%、母親4.7%であり、HBc抗体陽性率は小児3.3%、母親27.9%、HBs抗体陽性率は小児30.9%、母親33.0%であった。また、DBS検体と同時に採血した血清検体のHBs抗原検査結果と比較したところ、感度92% (24/26)、特異度100% (895/895)であった。DBS法を用いたゲノム解析基盤の確立(西田):前年度に確立したDBS-ゲノム解析法を用いて、カンボジア人HBV感染患者497検体から収集した乾燥濾紙血からゲノムDNAの抽出を実施した。抽出したゲノムDNAを用いて全ゲノム増幅反応(WGA)を実施し、全血ゲノムDNAを用いた場合のTaqMan法によるSNPタイピング結果を比較した。タイピング結果は100%一致し、DBS-WGA-DNAを用いたゲノム解析が可能であることが確認された。HBワクチン不成功小児におけるHBVゲノム解析(小松):B型肝炎母子感染予防不成功例を対象として、母子の血液、爪、毛髪、臍帯よりDNAを抽出し、S抗原変異株(ワクチンエスケープ/VEM株)の有無を解析した。血液だけではなく、爪、毛髪、臍帯にもVEM株がminorクローンとして存在することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
健康成人を対象としたHBワクチン接種において、HBs抗体獲得、高抗体価の維持、更に追加接種(Booster)時の免疫反応の機序を明らかにした。HBワクチンによるHBs抗体獲得率・維持率向上に繋がる知見を得、研究成果を論文発表した。DBSの精度評価および小児と母親4,540人のDBS検体の肝炎ウイルスの免疫血清学的測定を行った。加えてHBVDNAの検出とfull-sequence解析や系統樹解析も順調に進行している。前年度に確立したDBS法を用いてカンボジア人HBV感染患者のゲノムDNAを抽出し、ゲノム解析が可能なQualityを有する十分量のゲノムDNAを収集することができた。全ゲノム増幅反応を実施したゲノムDNAを用いたゲノム解析の有効性も確認できたことから、多数のSNPに関するゲノム解析を実施する体制が整った。母子感染予防不成功例において、爪、毛髪、臍帯を用いたウイルス遺伝子解析が、感染予防の原因特定に有用であることを明らかにした。今後、検討症例数を増やすことにより、母子感染予防不成功の原因を明らかにする。
HBワクチン接種の応答性を規定する免疫・ゲノム因子の同定 :申請者らはHBワクチン応答性に関与する遺伝子SNPを同定した。今年度はDBSサンプルから抽出したゲノムDNAを用いて、健康成人、小児のコホートで候補SNPsのReplication解析を実施する。同SNP陽性者、陰性者において遺伝要因と免疫応答性の関係を検討することで、ワクチン不応答性解除の方向性を明らかにする。母子感染予防不成功の児において爪、毛髪、臍帯からHBV DNAが高率に検出される原因を明らかにするため、inverse PCR法を用いてcell-virus integration siteの検出を行う。また、B型慢性肝炎患児のサイトカイン定量を行い、小児におけるB型肝炎ウイルス排除とサイトカインとの関係を明らかにする予定である。HBV感染早期に発動する免疫因子とHBV排除に関与する因子の同定 :HBワクチン接種者において、HBs抗体獲得 とTFH、B細胞系列の関連性を明らかにした。今年度はHBV感染肝癌細胞とマクロファージ、TFH、B細胞の共培養系を用いて、抗原特異的B細胞の誘導機序を明らかにする。カンボジアでのHBV母子感染実態調査とHBV・ホストゲノムの解析 :今年度は日本人で同定されたHBワクチン応答性に関与するホスト遺伝要因の再現性を検証する。HBワクチン効果を検証するために母児ともにHBs抗原陽性である濾紙検体を用いてHBV sequence解析を行い、α determinantにおけるHB vaccine mutants(VEMs)の頻度とVEMs種類の分布について明らかにする。HBV持続感染している母児について感染経路の解明を行う。カンボジア母子感染成立者、H Bワクチン不応答者のホストゲノムとVEMの関連性を明らかにすることで、HBV高浸淫地区における母子感染予防対策確立への基盤情報を提供する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件)
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