研究課題/領域番号 |
17H04173
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
柴 祐司 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70613503)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 再生医療 / 虚血性心疾患 / 多能性幹細胞 |
研究実績の概要 |
1)慢性心筋梗塞モデルにおける有効性の証明 移植心筋細胞グラフトの電気生理学的評価のため、GCaMP遺伝子を導入したが、心筋細胞分化後にはGCaMP蛋白の発現が確認できなかった。導入遺伝子内の干渉が原因と考え、Cre-LoxPを用いて、遺伝子導入後の余剰部分を除去することとした。GCaMPプラスミドにLoxP配列を加えたプラスミドを作製した。今後新しいプラスミドをカニクイザルiPS細胞に導入し、蛋白発現が確認でき次第、移植用心筋細胞の作製を開始する。 2)適切な免疫抑制プロトコールの確立 組織学的評価によるグラフト心筋の生着確認には、多くの動物が必要となるため、発光イメージングを用いて、宿主が生きた状態で継時的に心筋細胞の生着が確認できるシステムを開発することとした。従来からのルシフェラーゼを用いた発光イメージングでは発光が弱く、大動物のイメージングには不十分であった。そこでAkaluc遺伝子をiPS細胞に導入したところ、in vitroおよびin vivoにおいて強い発光が確認できた。 3)移植後不整脈のリスクコントロール iPS細胞由来心室筋細胞の作製に成功し、カニクイザル心筋梗塞モデルに移植したところ、細胞の生着が確認できた。さらに移植後不整脈について、心筋細胞移植動物よりも少ない傾向が確認できた。また、移植前後のCTによる心機能評価にも成功した。今後動物の症例数を増やしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)慢性心筋梗塞モデルにおける有効性の証明について、GCaMP蛋白の発現が確認できなかったものの、原因を解明し解決法を見出した。今後余剰遺伝子を除去した遺伝子導入によりGCCaMP蛋白の発現が確認でき次第心筋細胞の作製を行う。2)適切な免疫抑制プロトコールの確立について、新たに発光イメージングの開発を行ったことにより、少ない動物数で、免疫抑制プロトコールの樹立が可能となる。3)移植後不整脈のリスクコントロールについて、すでに心室筋細胞の作製、移植細胞の生着、不整脈評価が開始出来ており、当初の予定よりも研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)慢性心筋梗塞モデルにおける有効性の証明実験のため、樹立した5頭分のカニクイザルiPS細胞に対して、細胞標識と電気生理学実験に用いるGCaMP遺伝子を導入する。遺伝子導入による細胞の性質変化を避けるため、CRISPR-Cas9を用いて、ゲノム遺伝子上のAAVS1領域特異的な導入を行う。遺伝子改変iPS細胞から心筋細胞を作製し、凍結保存する。 3)移植後不整脈のリスクコントロール実験においては、iPS細胞由来心室筋細胞の作製に成功したため、この細胞と通常の心筋細胞をカニクイザル心筋梗塞モデルに移植し、移植後不整脈の発生頻度を比較・検討する。具体的には、純化心室筋細胞(N=5)、非純化心筋細胞(N=5)、または生理食塩水(N=5)を心筋梗塞発症2週間後のカニクイザル心臓に直接注射により移植する。移植後12週間の経過観察中に、Holter心電図による不整脈評価と心エコー・心臓CTによる心機能評価を行う。さらに移植12週間後に心臓を摘出し、移植細胞の生着と腫瘍形成の有無について組織学的評価する。本年度中に合計8頭の動物実験を終了させる予定である。 2)適切な免疫抑制プロトコールの確立実験においては、通常型のiPS細胞移植だけでなく、MHC型を遺伝子編集技術によって調節した細胞株を樹立し、移植実験の準備を行う予定である。
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