研究課題
心臓は再生能力に乏しく、重症心不全に対する新しい治療として再生医療が期待されている。心臓再生には幹細胞から心筋を作製し移植する方法があるが、細胞作製工程が煩雑、腫瘍形成の可能性、移植心筋の生着が困難など課題もある。これに対し、我々は心筋特異的転写因子を導入して、線維芽細胞から心筋を直接作製する心筋リプログラミング法を開発した。この方法は工程が単純、細胞移植の必要がない、腫瘍も形成しないなど利点を有する。しかしこれまでの心筋リプログラミング法は作製した心筋が増えず、心筋以外の心臓構成細胞を作製できないという課題があった。そこで本研究では増殖能・多分化能を有する心臓前駆細胞の直接誘導を目指し、新規心臓前駆細胞リプログラミング因子を同定する。さらに心臓前駆細胞誘導の分子機構を解明する。本年度は新規心臓前駆細胞リプログラミング因子のスクリーニングと同定を行った。これまでに分担研究者の産業技術総合研究所・五島先生から供与される世界最多のcDNAライブラリーを用いて心臓前駆細胞リプログラミング因子のスクリーニングを行った。候補因子は心臓発生過程において、心臓前駆細胞が出現する時期特異的に発現が上昇する転写因子で、かつノックアウトマウスの表現型で心臓の発生異常・胎生致死などをきたす機能的に重要な遺伝子60個を候補因子とする。これら候補遺伝子をcDNAライブラリーから作製したレトロウイルスベクターでマウス胎児線維芽細胞に感染させ、心臓前駆細胞特異的遺伝子であるMesp1, T (Brachyury), Flk1/PDGFRの発現をQRT-PCRやFACSにより解析した。これまでの実験で複数の新規心臓前駆細胞リプログラミング因子を同定した。
2: おおむね順調に進展している
心臓前駆細胞リプログラミング遺伝子のスクリーニングシステムの構築に成功した。さらにこれまでの実験で遺伝子60個をスクリーニングし、複数の心臓前駆細胞リプログラミング候補遺伝子を見出した。
今後は心臓前駆細胞リプログラミング遺伝子による細胞リプログラミングの分子機構解明や作製した細胞の機能解析の検討を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
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