研究課題
1) ながはまコホートにおいて、肺機能と動脈硬化の指標である上腕-足首脈速度(baPWV)の継時的な情報(初回調査[I期]から再調査[II期])を取得可能であった7523人を対象に、一秒量(FEV1)とbaPWVの経年的変化の関連を検討した。経年的FEV1の変化量は、%ΔFEV1= (II期FEV1 - I期FEV1)/追跡期間/I期FEV1×100として、経年的baPWVの変化量はΔbaPWV = II期baPWV-I期baPWVとして算出した。平均追跡期間は、1815±135日であった。平均経年的FEV1変化量は-34.0 ± 0.6 ml/年であった。%ΔFEV1とΔbaPWVは年齢・性別・喫煙・高血圧・糖尿病などの既知の動脈硬化に関与する因子で補正後も負の相関関係を認めた(β = -0.035、p = 0.0027)2)コホートで得られた客観的な睡眠障害関連データを含む各種の臨床データと、質量分析による99種の代謝産物血中濃度(メタボローム)のデータを解析した(n = 6417)。正常群と中等症以上の睡眠呼吸障害合併群の比較でfold change>1.1かつP<0.05であった代謝産物は32種であった。これらの因子でKEGG pathway解析を行った結果、プリン代謝及びデンプン・ショ糖代謝経路の有意なenrichmentを認めた。これらの経路にある因子のうち、フルクトース・尿酸・ヒポキサンチンは、年齢・性別・合併症を補正した重回帰分析でも中等症以上のSAS合併と血中濃度上昇に有意な相関を認めた。中等症以上の睡眠呼吸障害はフルクトース代謝とプリン代謝経路に影響する可能性がある。1)2)の結果を日本呼吸器学会にて報告した。
2: おおむね順調に進展している
肺機能急速低下群に対する睡眠時無呼吸を中心とした睡眠呼吸障害、活動量の影響を調べることが本研究の目標の一つであるが、進行中のコホート第2期参加者9,850名中、9,109人の同意を頂き、肺機能と同時にアクチグラフと睡眠日誌を併用しての客観的な睡眠時間測定、測定した客観的な睡眠時間にて補正した酸素飽和度計による睡眠呼吸障害(SDB)の有無と重症度、その他、生活習慣病のパラメータを取得し、9,109人中、7051人にて解析可能な資料を得、すでにSDBと睡眠時間、高血圧、糖尿病の関連を性差、閉経前後を含めて米国学会誌に報告したが(Matsumoto T, et al. Sleep 2018), さらに、夜間の尿回数が多いと夜間血圧の生理的な低下が妨げられることも報告した(Matsumoto T, et al. 2018).さらに、コホート観察開始時の肺機能及び経年的な肺機能低下が、動脈硬化の指標である上腕-足首脈速度(baPWV)の継時的な変化と相関することを見出し、平成31年度の呼吸器学会にて発表した。また、コホートで得られた客観的な睡眠障害関連データを含む各種の臨床データと、質量分析による99種の代謝産物血中濃度(メタボローム)のデータを解析し(n = 6417)、中等症以上の睡眠呼吸障害はフルクトース代謝とプリン代謝経路に影響する可能性があることを示した。本研究の結果も呼吸器学会にて発表した。また、さらに5年間の経過をおいたコホートの肺機能、睡眠呼吸障害、日常の活動量の再取得も順調に進んでいる。
これまでの測定、集積済みの資料と平成29年度からの前向き資料を用いて、肺機能急速低下、気道疾患と睡眠障害の関連を調べ、統合的オミックス解析から特徴的なメタボロームの発見に努め、肺機能急速低下群のバイオマーカー発見に努める。I.約7,000名の睡眠障害(短時間睡眠、睡眠時無呼吸の程度、睡眠分断)、身体活動量の客観的資料と5年間を経た健診資料から、肺機能急速低下と睡眠障害、身体活動量の関連を他の多くの健診資料とともに多角的に評価する。すなわち、気道疾患患者における睡眠障害の有無と頻度、身体活動量の程度を健常人と比較し、睡眠障害、身体活動量の程度が肺機能低下に対するリスク因子としての意義を確立する。II.健常者、各病態単独、各病態+睡眠障害例をそれぞれに統合的オミックス解析を行い、特にメタボライト:代謝産物から、睡眠障害合併、病態急速進行のバイオマーカーの探索を行う。肺機能の経年変化及び睡眠障害の関連をオミックス解析による病態生理の解明、肺機能強度低下群、睡眠障害の有無を判定するバイオマーカーの発見を試みる。すなわち、質量分析による網羅的オミックス解析とカタログ化を行い、第二期の情報との関連解析による肺機能急速低下、COPD、気管支喘息難治化のバイオマーカーの探索と同定を行う。また、気道疾患に睡眠障害(短時間睡眠、睡眠時無呼吸、睡眠分断)合併時のメタボロライト変化を重点的に解析して、睡眠障害合併のバイオマーカーの探索も行う。III.平成29年度から開始される長浜3期コホートにおいても健診資料を集積し、前向き資料の作成を行う。IV.前向き検討3期コホート資料を集積し、バイオマーカーの実用性を確立する。2期までの検体から得られた、メタボライト出現群の肺機能低下度、COPDの悪化度、気管支喘息難治化の前向き検定を行ない、バイオマーカーの有用性の検定を行う。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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