研究課題
初回pembrolizumab治療を受けた肺癌症例の末梢血をCyTOFにより解析しCD62Llow CD4+ T細胞サブセット内に存在する抗腫瘍性クラスターの同定を行った。まず、CXCR3, CCR4, CCR6, T-bet, FoxP3などの発現を基にして14クラスターに分類した。それぞれのクラスターとpembrolizumab治療後無増悪生存期間の相関を多重比較したところ、CD62Llow CXCR3+CCR4-CCR6+(Th1/17)及びCXCR3-CCR4-CCR6+ CD4+ T細胞(CCR6 SP)の2つのクラスターのみが有意に相関していることを見出した。独立した未治療肺癌検証コホート、既治療肺癌検証コホートの肺癌2コホートでもこの新規CD4+ T細胞クラスターは有意に相関し、全ての回帰直線はほぼ同一であった。次に、末梢血中に於いて治療前効果予測が可能であることが示された新規CD4+ T細胞クラスターと腫瘍微小環境内免疫細胞の相関関係について解析した。これは未治療肺癌コホートにおいて採取された腫瘍検体を用い、腫瘍内および腫瘍間質のCD4, CD8, FoxP3, PD-1, PD-L1免疫組織学的解析により行った。この腫瘍微小環境細胞数と末梢血T細胞クラスター存在比を用いて数理学的ネットワーク解析を行った結果、末梢血で見出された新規CD4 T細胞クラスターは、腫瘍間質CD4+ T細胞数と直接の強いネットワークを構築することが明らかとなった。一方、従来抗腫瘍免疫に重要と考えられていた血中Th1細胞は腫瘍間質 CD8+ T細胞数と強いネットワークを形成していた。また、腫瘍間質CD4+ T細胞数そのものが治療後無増悪生存期間と正の相関関係にあることも明らかとなった。以上の結果を基に特許出願を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
末梢血から腫瘍組織内免疫状態を予測可能なT細胞クラスターネットワーク構築を行うことができた。このネットワークにおける重要なT細胞クラスターを発見し、特許出願することができた。末梢血T細胞クラスターを用いて、systemic immunity, microtumor environment immunityを予測可能なシステム作りが順調に進んでいる。
抗腫瘍免疫を司るT細胞クラスターネットワークを解明しつつある。今後は、このネットワークを抗腫瘍効果を高めるように変更介入できる治療の開発を目指す。具体的には今回発見した新規CD4 T細胞クラスター増加に繋がるケモカインブロック療法を検討している。手術、放射線治療、抗CTLA-4抗体治療前後検体、長期フォロー症例検体などを用いて、現在の治療介入が抗腫瘍T細胞免疫ネットワークがどのような影響を与えているのかを明らかとする。肺癌以外の癌種患者の末梢血解析により、肺癌と同様な抗腫瘍T細胞免疫ネットワークが認められるのかを解析する。
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