研究課題
本年度は、主として当科で遺伝学的に診断したXLAS女性患者の遺伝子型と臨床像(重症度)の相関について検討した。さらに、重症女性患者に対して次世代シークエンサー(NGS)を用いた疾患修飾遺伝子の網羅的解析を行なった。対象は2006年1月から2015年12月までに当科で遺伝学的に診断を行なった250家系のXLASのうち、179家系の275人の女性患者および、遺伝学的診断はなされていないものの、遺伝子変異を有することが予想される61人の有症状患者家族女性の計336人である。遺伝学的診断は、サンガー法によるCOL4A5遺伝子の解析もしくはNGS疾患パネルによるCOL4A5遺伝子を含めた網羅的遺伝子解析を行なったのち、変異が同定できない症例についてはコピー数異常の解析やmRNAの解析を追加した。更に、60歳以前にESRDに至った症例および3歳以前に蛋白尿が出現した症例を重症患者と定義し、これらの患者に対してNGSを用いて疾患修飾遺伝子として重症化に関与し得る既知のポドサイト関連45遺伝子の網羅的解析を施行した。遺伝子型別に腎生存曲線を作成したが、遺伝子型と臨床像に相関は認めなかった。また、難聴の有無で腎生存曲線を作成したものの、両者に有意な差は認めなかった。更に、重症24例に対するNGSによる疾患修飾遺伝子の解析では1例でCOL4A3遺伝子にナンセンス変異の合併を認めたものの、その他の症例では明らかな変異を認めなかった。以上より、XLAS女性患者では臨床像と遺伝子型に相関は認めないことが確認された。更に、ほとんどの重症患者で疾患修飾遺伝子の変異は同定されなかったことより、女性XLAS患者の重症度は多因子によって規定されるものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
女性Alport症候群患者については、臨床像と遺伝子型に相関は認めないことが確認され、更に、ほとんどの重症患者で疾患修飾遺伝子の変異は同定されなかったことより、女性XLAS患者の重症度は多因子によって規定されることを明らかにすることができた。
神戸大学小児科はわが国でアルポート症候群の遺伝子解析を体系的に行っている唯一の研究機関であり、今後も年間約100例のXLAS家系(患者)の遺伝子解析を実施する。平成30年度は、α3, 4, 5(IV)鎖の分子シミュレーション解析及びスプライシング異常がAlport症候群の予後に与える影響を中心に、遺伝子型と臨床像の関連を解析する。具体的には、世界最高水準の性能を持つスーパーコンピューター「京」を用いて、変異の位置や種類の異なる10-12程度のミスセンス変異の影響を解析する。具体的な解析項目としては、Collagenous domainに関しては、三重らせん部分の全長だけでなく、その安定性等に関しても解析する予定であり、NC1 domainに関しては、ドッキングスコア(PatchDock)、結合の数、ドッキングスコアの合計に加え、NC1 domain同士の結合の角度の変化等にも注目し、それらのパラメーターと腎予後の関連について検討する。また、男性XLAS患者の重症度とtruncating及びnon-truncatingなスプライシングの異常との関連を検討する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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