研究課題
慢性腎臓病(CKD)の進行や透析患者の生命予後においてリンコントロールは非常に重要な役割を演じている。リン代謝異常は早期CKD から生じており、リンバランスの維持は生命予後を規定する重要な調節系であると考えられる。近年、リン酸(以下リン)代謝調節系(リンシグナルネットワーク:P net)を支配する繊維芽細胞様増殖因子 FGF23 /klotho 系など明らかにされ、骨と腎臓を結ぶリン調節系など、様々なリン代謝における臓器相関の重要性が明らかにされた。我々は、これまでの研究によりリンシグナルネットワーク (P net)調節に共通に関わるリン応答複合体 (Psome)の存在とリン代謝異常発症への関与を見出した。平成29年は、腎臓におけるリン感受機構に関わる分子群(リン応答複合体)およびFGF23誘導因子に関して実験を実施した。Tatsumiらが樹立した、ジフテリア毒素 (DT) 投与により任意の時期に骨細胞を特異的に死滅させることができるトランスジェニックマウス (DMP1-hHB-EGF Tg: 以下Tgマウス) の系統を使用し骨細胞死滅マウスを作製した。この方法は、任意の時期に誘導的に骨細胞のみを死滅させることのできるトランスジェニックマウス(Tg)を確立した。本マウスを解析し、骨細胞から分泌されている因子として FGF23以外にも、様々な分泌蛋白の発現を解析した。また、腎臓における、リン吸収を中心にミネラル代謝を分析し、腎線維化の発症、 Klotho蛋白の減少など、リン感受機構における異常を明らかにした。平成29年度は、Psomeの中心である TMD2(#213)遺伝子欠損マウス作製しており、その表現型を解析した。本マウスの外見上での、骨格異常は観察されていないが、食餌性リン応答に変化が見られた。 また、腎臓におけるリン感受機構において、明らかな異常が観察された。
2: おおむね順調に進展している
平成 29年度の計画に従い、主に、腎臓におけるリン感受機構に関わる分子群(リン応答複合体 )及び FGF23 誘導因子に関して実験を実施した。平成29年度の研究計画に基づき、各項目に関してほぼ進行しており、平成30年度の計画が実施できると考える。よって、平成29年度の計画は、おおむね達成できた。
平成30年度の計画としては 、 Psomeを中心としてリン感受する分子同定および腎/骨細胞から分泌されるFGF23誘導因子 (IFGF)、以下の4項目に関して推進する。1)IFGFの同定に関する骨細胞特異的欠損マウスからのアプローチ:平成29年度に確立したマウスを用い、骨細胞から分泌されている因子の機能欠損が可能となる。本マウスの腎臓障害の原因を明らかにすると同時に、IFGFによるFGF23分泌が、骨細胞由来であるか否か検討を行う。2)G-CSF投与による骨細管破断による解析:6-7週齢の♂(C57BL/6)マウスにG-CSFを投与することで、骨細管ネットワークを破断させる。この方法により、IFGF分泌と骨細管の破断状態と、およびFGF23の誘導およびリン利尿との関係について検討を加える。これらは、すでに一部実施しており、平成30年度に、投与量を調整して再度、実施する。3)TMD2欠損マウス表現型解析:平成29年度は、Psomeの中心である TMD2(#213)遺伝子欠損マウス作製しており、現在、その表現型を解析している。平成30年度は、各種骨解析技術を用いて、本マウスの異常を明らかにする。 また、TMD2と相互作用するタンパクを同定する。4)IGFI候補分子 Nampt遺伝子の解析:骨細胞欠損マウスの遺伝子解析から、骨細胞や腎臓で発現が顕著に上昇する Namptに関して、その生理学的役割の解析を行う。
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