研究課題
最近注目されている、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク(MOG)抗体陽性神経疾患の臨床・病態・治療を解析した。1.本疾患259例において、男女比はほぼ1:1で、発症年齢は10歳以下から70台まで広く分布していたが、10歳、35歳、55歳あたりでの発症がやや多かった。臨床型は小児では視神経炎とADEMが多く、一部の症例は多発性硬化症(MS)と診断されていた。一方、成人は視神経炎が最も多く、一部の症例は大脳皮質脳炎だった。脊髄炎は成人に多く半数が3椎体以上の長大病変だった。MOGは成熟したミエリンのマーカーであり、本疾患におけるこのような年齢と臨床型との関係はミエリンの成熟と関連していることが推察された。MOG抗体価が低下すると再発は少なく、高値が継続する例では再発が起こりやすかった(欧州MS学会[ECTRIMS]で発表し、1200演題の中から学会最終日のクリニカルハイライトで注目すべき20題の1つとして紹介された)。2.我々が初めて報告したMOG抗体陽性“てんかん発作を呈する片側性大脳皮質脳炎”及び“対麻痺を呈する両側前頭葉内側皮質脳炎”はそれぞれ39例、10例を集めた。しばしばこの大脳皮質脳炎で初発し、その後視神経炎やADEMなどで再発していたが、非再発例もあった。また急性期にはステロイドパルス療法が有効だった。3.急性期の髄液における総合的なサイトカイン解析では、Th17を中心とするサイトカインの発現亢進が特徴的で、そのパターンは視神経脊髄炎に類似していたが、MSとは大きく異なっていた(JNNP in press)。これと一致して、MSの治療薬であるインターフェロンßの投与で再発率の低下はみられなかったが、視神経脊髄炎と同様にステロイド長期内服は再発予防に有効であると思われた。
2: おおむね順調に進展している
1.本疾患259例の解析は国際的にも最多の症例数であり、その結果は上記のごとく欧州MS学会で発表した際に、注目すべき演題としてクリニカルハイライトで紹介された。上記の2つのタイプの大脳皮質脳炎は、それぞれs39例と10例を集積しておりその特徴を解析し、論文執筆中で間もなく投稿する予定である。2.急性期の髄液における総合的なサイトカイン解析では、Th17を中心とするサイトカインの発現亢進が特徴的で、MSとは大きく異なっていた。この知見は、最近J Neurol Neurosurg Psychiatry誌にacceptされた。今後本疾患の治療戦略を考えるうえで重要な知見と思われる。インターフェロンßの投与で再発率の低下はみられなかったことも上記の髄液サイトカインの結果と合わせて重要であり、論文執筆中である。3.脳生検例における神経病理学的解析も現在進行中である。
上記の如く、本研究は現在ほぼ順調に進展しておりこのまま研究を継続していきたい。我々割れのグループではMOG抗体検査は年間3000検体程度行っており、今後さらに本疾患の症例数を増加させることができると思われる。また髄液や脳生検の検体などもさらに積極的に収集していきたい。細胞性免疫や分子免疫病態の解析も加えていく予定である。執筆中の論文は早期に投稿していく予定である。
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