研究課題/領域番号 |
17H04194
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 正仁 金沢大学, 医学系, 教授 (80191336)
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研究分担者 |
濱口 毅 金沢大学, 附属病院, 講師 (70452109)
坂井 健二 金沢大学, 附属病院, 助教 (00572306)
池田 篤平 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (30755773)
中山 隆宏 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (00532821)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβタンパク / 凝集 / 伝播 / 防御 |
研究実績の概要 |
[1] 各種Aβ seedsの準備とin vitro凝集系におけるオートクレーブ処理効果の確認 1.In vitro凝集系による各種Aβ凝集体作成:In vitro凝集系を用いて、合成Aβ1-40及びAβ1-42ペプチドよりAβ凝集体を作成した。2. In vitro凝集系におけるオートクレーブ処理効果の確認:Aβ凝集体をオートクレーブ処理し、処理前後におけるAβ seedsのseeding効果をチオフラビンT(ThT)法による継時的モニタリング、円偏光二色性スペクトル測定、電子顕微鏡で評価した。Aβ seedsのseeding 効果は、オートクレーブの処理時間や温度に依存して低下することを明らかにした。 [2] In vitro Aβ 凝集系における各種Aβ seedsの処理前後の比較 合成Aβ1-42 seeds及びde novo Aβ1-42線維の伸長過程を世界最速の高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)を用いて、単一線維レベルで観察した。また、オートクレーブ処理後の合成Aβ1-42 seedsを用いた同様の実験も行い、オートクレーブ処理のAβ1-42 seeds及びde novo Aβ1-42線維の伸長過程への影響を単一線維レベルで解析した。その結果、オートクレーブ処理後のAβ1-42 seedsは、未処理のseedsと比較して伸長過程が有意に抑制されていることを明らかにした。また、オートクレーブ処理されたAβ1-42 seeds存在下で形成されるde novo Aβ1-42線維においても同様に、伸長過程が有意に抑制されていることを明らかにした。 [3] ADモデル動物における各種Aβ seedsのseeding effectsの処理前後の変化 オートクレーブ未処理のヒト脳ホモジネートをADモデルマウスであるR1.40マウスの脳に接種した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HS-AFMによるAβ1-42 seeds及びde novo Aβ1-42線維の伸長過程のイメージング及び解析により、オートクレーブ処理後のAβ1-42 seedsの伸長過程は有意に抑制されていることを明らかにした。また、オートクレーブ処理されたAβ1-42 seeds存在下で形成されるde novo Aβ1-42線維の伸長過程も有意に抑制されていることを明らかにした。これらの結果は再現性のある実験データに基づくものであり、現段階で実験方法や研究計画に大きな問題はない。 また、in vitro Aβ凝集系実験においてAβのseeding効果が消失することが明らかとなったオートクレーブ条件で処理したヒトの脳ホモジネートをマウス脳に接種する動物実験も順調に進行している。接種1年後にマウス脳を摘出し、病理学的・生化学的評価を行い、Aβ病理の個体間伝播を防御する消毒法の確立を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
[1] In vitro Aβ 凝集系におけるAβ seedsのオートクレーブ処理前後の比較によるseeding抑制メカニズムの解明 [池田、中山、山田ほか]:In vitroのAβ凝集系実験においてAβのseeding効果が消失することが明らかとなったオートクレーブ条件で処理したAβ1-42 seedsの処理前後の形態や凝集過程をHS-AFMを用いて観察・解析する。Aβ1-42 seedsの凝集過程は、“step phase(Aβ1-42線維断端が持続的に動き、線維が伸びている過程)”と “dwell phase(Aβ1-42線維断端が定点に留まり、線維伸長が止まっている過程)”に分けて解析し、伸長速度 (growth rate)及びdwell timeを評価項目として解析を進める。 [2] ADモデル動物におけるAβ seedsのオートクレーブ処理によるseeding 抑制効果の解明 [浜口、坂井、山田ほか]:オートクレーブ処理前後のヒトの脳ホモジネートをマウス脳に接種する動物実験を継続する。接種1年後に摘出したマウス脳を病理学的・生化学的に評価し、Aβ病理の個体間伝播を防御する消毒法の確立を目指す。 [3] 英語論文作成・海外ジャーナルへの投稿 [浜口、池田、山田ほか]:本研究で得られた研究データをもとに英語論文を作成し、海外ジャーナルへ投稿する。
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