研究課題
(1)運動ニューロン変性における細胞間コミュニケーション異常の分子機構解明ExocytosisにおけるTDP-43機能とその病態を明らかにするため、膵ベータ細胞株(MIN6)においてTDP-43をノックダウンし、インスリン分泌機能低下を生化学的解析および分子画像解析(TIRFおよびCaイメージング)により解析したところ、TDP-43の発現低下に伴いグルコース負荷時のインスリン分泌が低下し、TIRFにおいても早期のインスリンexocytosisが抑制された。網羅的遺伝子発現解析により、TDP-43ノックダウン時に小胞分泌に関わるCaチャンネル(Cacna1c)の発現が低下することが示され、その原因としてCacna1cのプロモーター活性がTDP-43のノックダウンにより低下することが示された。TDP-43をノックダウンしたMIN6にCacna1cを強制発現することでインスリン分泌が回復した。AAV-RIP-Creを用いた膵島特異的ノックアウトにより、グルコース負荷時のインスリン初期分泌が低下し、in situ hybrydizationにおいてCacna1cのmRNAの発現低下が示された。(2)神経活動による運動ニューロン・骨格筋システム変性の時空間的病態変化の解析SOD1 G93AマウスとVAChT-Creマウス、および全身性にfloxed stop codonの下流でhM3Dqを発現するトランスジェニックマウスを交配することで、下位運動ニューロンにのみhM3Dqを発現するマウスを得た。このマウスにCNOを腹腔内投与し、下位運動ニューロンを選択的に興奮(hM3Dq)させ、Rotarodなど運動機能の変化を解析したところ、マウスの運動機能自体には明らかな変化は認めらなかったが、病理学的解析においてマウス脊髄運動ニューロンの萎縮が認められた。
2: おおむね順調に進展している
運動ニューロン変性における細胞間コミュニケーション異常の分子機構解明については、AAVなどを用いてin vivoにおける仮説の検証を進めることができ、当初の予定よりも研究が進展した。一方、神経活動による運動ニューロン・骨格筋システム変性の時空間的病態変化の解析については得られたマウスの運動機能解析では明らかな変化が見られなかったものの、病理学的変化が認められたことから、今後マウス蛋白質・遺伝子レベルでの解析を進めるとともに、培養細胞を用いた検証を進める予定である。
運動ニューロン変性における細胞間コミュニケーション異常の分子機構解明については、マウス皮質ニューロンにおけるTDP-43の機能についても解析を進める。神経活動による運動ニューロン・骨格筋システム変性の時空間的病態変化の解析についてはNSC34など培養細胞に変異SOD1とhM3Dqを発現させた際のSOD1蛋白質の発現や細胞障害の変化を解析する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Neurology
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