研究課題/領域番号 |
17H04196
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
阿部 康二 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20212540)
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研究分担者 |
太田 康之 岡山大学, 大学病院, 講師 (20746854)
山下 徹 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60644408)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 酸化ストレス / 核細胞質輸送障害 |
研究実績の概要 |
本研究は神経変性疾患の包括的分子病態解明のため、ニューロン変性の原因である酸化ストレスと、近年難治性神経疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)で報告されている、核細胞質輸送障害および蛋白ゲル化異常とに関連する分子機構を明らかにし、臨床的に有用性の高い次世代型治療法の開発研究を推進することが目的であり、様々に神経変性疾患のモデルマウスを用いた基礎研究と様々な神経変性疾患の患者を対象とした臨床研究を計画している。基礎研究においては、特に酸化ストレス可視化ALSモデルマウスとして、0KD×S0D1 double Tgマウスの確立をし、酸化ストレスを可視化できる0KDを利用して、ALS病態における酸化ストレスの経時的変化の解析をLuciferase発光の観察(in vivo imaging)により行った。In vivo imagingの解析で、ALS発症早期(15週齢)からALS発症後期(18週齢)になるにしたがい、脊髄および下肢筋の酸化ストレス発現増強を認めた。またRotarod法において、15週齢から18週齢になるに従い運動機能低下を認めた。また18週齢において、マウス眼静脈から採血を行い、血液酸化ストレスマーカー(dROMsテスト)について解析を行い、ALSマウス血清において酸化ストレスマーカー上昇を認めた。また18週齢においてマウス脊髄および下肢筋肉のサンプリングも行い、組織学的解析にて酸化ストレスマーカーである、Nrf2の発現が下肢骨格筋および腰髄運動ニューロンで亢進していることを確認した。現在、0KD×S0D1 double Tgマウスに抗酸化治療を行い、臨床的治療効果および、酸化ストレスマーカーの改善効果につき解析している。臨床研究においては、ALS患者脳および脊髄における血流および糖代謝をPET検査で評価し、ALS頸髄において糖代謝が亢進していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究においては、酸化ストレス可視化ALSモデルマウスとして、0KD×S0D1 double Tgマウスの確立をした。0KD×S0D1 double Tgマウスは、酸化ストレスを可視化できる0KDマウスとALSモデルマウスであるG93A-S0D1マウスをかけあわせて作成し、ALS病態における酸化ストレスの経時的変化の解析をLuciferase発光の観察(in vivo imaging)により行った。ALS発症前(運動障害出現前、12週齢)、ALS発症早期(15週齢)、ALS発症後期(18週齢)において、in vivo imagingを行い、15週齢から18週齢になるにしたがい、脊髄および下肢筋の酸化ストレス発現増強を認めた。また、同時期にマウス体重およびRotarod法により運動機能を評価し、15週齢から18週齢になるに従い運動機能低下を認めた。また18週齢において、マウス眼静脈から採血を行い、血液酸化ストレスマーカー(dROMsテスト)について解析を行い、ALSマウス血清において酸化ストレスマーカー上昇を認めた。また18週齢においてマウス脊髄および下肢筋肉のサンプリングも行い、組織学的解析にて酸化ストレスマーカーである、Nrf2の発現が下肢骨格筋および腰髄運動ニューロンで亢進していることを確認した。臨床研究においては、ALS患者脳および脊髄における血流および糖代謝をPET検査で評価し、ALS頸髄において糖代謝が亢進しているが、血流増加を認めないことを確認した。よって、ALS頸髄においては血流と糖代謝のアンカップリングが起こっていることが判明した。またALS頸髄における糖代謝亢進はALS症状の重症度と相関を認めた。以上よりALS病態には頸髄の糖代謝の亢進と血流増加を認めないアンカップリングが関与していることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究において、①大脳低還流ADマウス(APP)モデル、②Asidanマウス(GGCCTG リピート延長NOP56)モデル、③大脳低還流PD(6-OHDA投与)ラット、④酸化ストレス可視化ALSモデル(OKD×SOD1 double Tg)マウスにおける、酸化ストレス・核細胞質輸送関連蛋白・蛋白ゲル化の病態解析と新規治療薬の開発。臨床研究において、⑤AD患者大脳、Asidan患者小脳・脊髄、PD患者脳幹・基底核、ALS患者脊髄における血流・糖代謝変化と酸化ストレスマーカーイメージングのPET解析と、血液検体での酸化ストレス解析と次世代型ペプチド解析、および剖検組織による核細胞質輸送関連蛋白・蛋白ゲル化異常の解析を進める予定である。基礎研究においては、酸化ストレス可視化ALSモデルマウスとして、0KD×S0D1 double Tgマウスの確立および酸化ストレスの経時的変化の解析(Luciferase発光の観察、in vivo imaging、血液酸化ストレスマーカーdROMテスト解析、マウス脊髄筋における組織学的解析)、マウス体重およびRotarod法による運動機能評価を行ったため、今後はさらに酸化ストレスマーカーNrf2関連の蛋白の解析を行う。また0KD×S0D1 double Tgマウスに抗酸化治療を行い、臨床的治療効果および、酸化ストレスマーカーの改善効果につきin vivo imagingおよび組織学的に解析する。臨床研究においては、ALS患者脊髄においてCu-ATSMなどの核種を用い、酸化ストレスイメージングをPET検査にて行う。また患者血液を用い酸化ストレスマーカーおよび抗酸化マーカーを測定する(dROMsテスト、BAPテスト、OXY吸着テスト)。さらに患者血液検体で、次世代型ペプチド解析をBlotchip-MS法(プロトセラ社製)を用い行う。
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