研究課題
本研究は神経変性疾患の包括的分子病態解明のため、ニューロン変性の原因である酸化ストレスと、近年難治性神経疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)で報告されている、核細胞質輸送障害および蛋白ゲル化異常とに関連する分子機構を明らかにし、臨床的に有用性の高い次世代型治療法の開発研究を推進することが目的である。基礎研究においては、近年確立した脳血流低灌流を伴う認知症モデルマウスに対してフリーラジカルスカベンジャー、エダラボンを投与し、その治療効果を詳細に検討した。 その結果、12ヶ月齢において、エダラボン治療群では運動機能および認知機能障害の大幅に改善を認めた。また病理学的組織の検討から、海馬の神経細胞数の減少を軽減するとともに、Aβ蛋白やpTau蛋白の異常蓄積を抑制することを明らかにした。以上の結果をまとめ、Journal of Alzheimer's Disease誌に既に報告を行った。臨床研究においては、健常者血清 100 例、MCI 血清 60 例、AD 血清 99 例を、プロトセラ株式会社が特許を保有する新しいペプチドーム(組織や細胞が産生するペプチド総体)解析技術(BLOTCHIP-MS法)を用いて探索した。 その結果、MCI とアルツハイマー病(AD)に特異的な 4 種類のペプチドを見出した。このバイオマーカーセットを用いると健常者と MCI と AD を識別することができ、健常者と AD の間で感度が 87%、 特異度が 65%(***p<0.001)であった。また、AD 患者のミニメンタルステート検査(MMSE)スコアとこのバイオマーカーセットから得られたスコアの相関が良好であることも確認した。今回発見された新しい血中ペプチド性バイオマーカーセットは、新規で、迅速で、非侵襲性で、定量性の高い、低コストで行える認知症スクリーニング法を提供するほか、新しい創薬アプローチを提供する可能性を示した。以上の研究成果をまとめ、 Journal of Alzheimer's Disease誌に既に報告を行っている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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