研究実績の概要 |
血中に投与して血液脳関門構成ペリサイトを活性化する物質の同定を目的として、in vitroでの薬物スクリーニングを行った。脂溶性でBBBの通過能があると考えられ、提携する製薬企業がvivoレベルでの薬物動態などのデータを把握している低分子化合物を一次スクリーニング対象の候補物質とした。培養皿上に単層培養したヒトBBB由来ペリサイト不死化細胞株に候補物質を添加した培養液を投与し、上清を回収した。活性化の指標としてペリサイトが出す複数の栄養因子(BDNF,GDNF, VEGF, bFGF)をターゲットとし、それぞれのELISA法での定量システムの確立を試みた。このうち、BDNF,VEGFは二種類のELISAキットを用いて測定し、共に再現性がある結果であったが、VEGFはいずれの候補物質に対しても有意な上昇を示さず、ペリサイト活性化の指標としてはBDNFを用いることとした。培養上清中のBDNF量をpositive controlであるハイドロコーチゾンよりも増加させる脂溶性低分子化合物が複数同定され、ペリサイト活性化を介する神経変性疾患治療薬の候補が得られた。この薬物スクリーニングは平成30年度もさらに継続する予定である。また、平成30年度以降にはin vitro BBBマルチモデルによるリアルタイムバリア機能モニタリングシステムを用いたBBBのバリア機能を変化させる候補化合物の同定プロジェクトが予定されている。新規にバリアー機能強化に関与し得る物質のスクリーニングと並行して、今回得られた候補物質のバリアー機能に対する効果も併せて検証する。
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