研究課題
第2年度に引き続き、提携する製薬企業がin vivoレベルでの薬物動態などのデータを把握している低分子化合物のスクリーニングを継続した。初年度用いたヒトペリサイト不死化細胞株を用いたスクリーニングに加えて、研究代表者の教室で樹立した3種類のヒト血液脳関門(BBB)構成不死化細胞株(内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト)からなるBBBマルチ培養モデルを用いたスクリーニングを実施し、脂質メディエーター受容体リガンド20種類をBBBマルチ培養モデルに投与した結果、BBBの調節因子である神経栄養因子の産生能が亢進する2種類の化合物の同定に成功した(特許申請に影響があるため具体的な化合物名、神経栄養因子の記載は公表しない)。これら2種類の化合物(化合物A,B)は、アストロサイト単培養群で有意に神経栄養因子の産生能を亢進させるが血管内皮細胞やペリサイト単培養群では神経栄養因子の産生能を亢進させないことを追加実験によって再検証した。この結果、候補化合物A,BはBBBを通過しアストロサイトに直接作用することで神経栄養因子の産生分泌を亢進する物質であることが立証できた。また、今年度施行したヒトBBBモデルを用いた物質透過性の検索により、化合物AはBBBを強固にする作用を有することを確認した。3年間の本研究により同定した2種類の脂溶性化合物は、中枢神経内での神経栄養因子の産生を促すことによって中枢神経実質の内部環境を神経再生の方向に改変する神経変性疾患治療薬のリード化合物としての可能性があるだけなく、BBB調節のための栄養因子の分泌を人為的に制御できる可能性があり、高分子治療薬を中枢神経内に流入させる際の補助治療薬となりうると結論付けた。また、BBB保護機能を有する化合物Aは、炎症性中枢神経疾患の治療にも効果がある可能性が示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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