研究課題/領域番号 |
17H04199
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
篁 俊成 金沢大学, 医学系, 教授 (00324111)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セレノプロテインP / 褐色脂肪組織 / 熱産生 / カテコラミン / 活性酸素種 / 還元ストレス |
研究実績の概要 |
肝臓由来の病態形成ヘパトカインselenoprotein P (SeP)欠損マウスで、野生型に比し基礎代謝が高く、脂肪細胞サイズが小型化することを観察した。平成29年度はその機序を個体レベル・細胞レベルで検討した。マウスを4℃の低温環境下に移して直腸温を測定したところ、SeP欠損マウスは野生型に比し体温が高く、サーモグラフィーで観察すると褐色脂肪組織(BAT)が存在する肩甲骨周辺で体温が高かった。さらに、この体温維持機構は抗酸化薬NACで前処置することで消失した。最近、褐色脂肪細胞で活性酸素種(ROS)がシステイン残基のスルフェニル化によりUCP1を活性化させることが報告された(Nature 32:112,2016)。そこで、SePが「エフェクター分子UCP-1を活性化するROS」を消去することで、BAT分化あるいはベージュ化を阻害する可能性を検証した。マウスから単離した前駆脂肪細胞を過酸化水素水で処置すると、Cys 253のスルフェニル化を介してUCP-1画家性化した。SePはこのROSによるUCP1活性化を抑制した。寒冷刺激時に活性化するβ3アドレナリン受容体をノルアドレナリンで刺激するとミトコンドリアからROSが産生され、UCP-1が活性化した。現在、この系を用いて、ノルアドレナリン誘導性ROS産生とUCP-1活性化に及ぼすSePの効果を検討中である。SeP欠損マウスは野生型マウスに比し、寒冷刺激による熱産生、BAT分化、UCP-1活性化が低下していた。BATにおけるSeP受容体Xを同定した。SeP受容体X-floxマウスをBAT特異的UCP1-Creトランスジェニックマウスと交配することで、BAT特異的SeP受容体X欠損マウスを作出した。このマウスの寒冷誘導性熱産生、およびSeP作用を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SePの褐色脂肪組織(BAT)分化に及ぼす作用を、マウスから単離したBATを用いた細胞レベル、および遺伝子改変マウスを用いた個体レベルの系を確立し、それぞれのレベルで実験が進行中である。申請時の作業仮説に加えて、これまで注目されていない新しいメカニズムが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度の確立した細胞レベルおよび個体レベルの系を用いて、引き続きSePのBAT分化に及ぼす作用をで検討する。 さらに、SePの骨への作用解析をすすめる予定である。
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