研究課題
AMPキナーゼ(AMPK)は、エネルギー枯渇を感知して活性化するキナーゼである。申請者は、骨格筋選択的にAMPK活性を抑制するdominant negative-AMPK発現マウス(DN-AMPK Tg)にストレプトゾトシン(STZ)を投与すると、血中インスリン値は低値であるにも関わらず、STZ糖尿病による高血糖、高脂肪酸血症、高ケトン体血症などの代謝異常が改善し、致死率が劇的に改善することを見出した。本研究では、STZ糖尿病における代謝異常の一部が、インスリン欠乏だけでなく、骨格筋を始めとする臓器間相互ネットワークの異常に起因するとの考えに立ち、実験を実施した。その結果、1) STZを投与すると、骨格筋のAMPKが活性化し、マイオカインであるIL6、irisin、myonectinの発現が骨格筋で増加した。これに対してDN-AMPK Tgでは正常化した。2) アディポカインとしてleptin、adiponectinを調べたところ、STZによって低下した血中leptin濃度がDN-AMPK tgマウスにおいて正常化していた。3) STZを処置した野生型、DN-AMPK tgマウスに、IL6、leptin, myonectinの中和抗体或いはリコンビナントタンパクを投与したところ、IL6の中和抗体によってSTZ糖尿病が改善し、血中leptin, myonectin濃度も増加した。DN-AMPK tgマウスにIL6リコンビナントタンパクを投与すると、改善していた糖尿病の代謝異常が悪化した。血中leptin, myonectin濃度も低下した。leptinとmyonectin中和抗体の効果はIL6の逆であった。以上の実験結果から、IL6、myonectin、leptinが相互に調節作用を営み、STZ糖尿病の代謝異常を引き起こすことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画では、本年度、STZ投与により血中濃度が変化していたマイオカインとアディポカインの効果を調べることを提案していた。概要で述べたように、ほぼ予測した結果が得られた。シグナル伝達分子の変化についてもいくつか結果を得ており、研究は概ね順調に進展していると考える。
今後、野生型STZ投与マウスとDN-AMPK tg STZ投与マウスにIL6やleptinの中和抗体、リコンビナントタンパクを投与し、血糖上昇ホルモンであるカテコラミン、グルカゴンへの効果を調べる。また、インスリンをこれらのマウスに投与して、インスリン治療に及ぼす効果を調べる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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