研究課題
実臨床に近い乳がんモデルとして、近年の培養技術の向上により可能になってきた患者由来乳がん組織からの3次元培養系を確立し、患者由来がん細胞を免疫不全マウスに移植した移植腫瘍モデルの作製に成功した。これにより、患者個々の病態を反映した継代可能な乳がん培養・移植モデルを用いて、エストロゲン作用ネットワークに関わる因子の発現解析、転写制御メカニズムの解析が可能になった。乳がん培養・移植系モデルに基づき、乳がんのエストロゲン作用とホルモン治療抵抗性の進行に関わり、乳がんの病態増悪をもたらす因子として、複数のRNA結合タンパク質と長鎖非コードRNAを同定し、これらの因子とさらに下流シグナル因子の発現調節による乳がん診断・治療・予防法への臨床応用の可能性が示された。同定したこれらRNA結合タンパク質と長鎖非コードRNAについては、エストロゲン受容体陽性乳がんを中心に、臨床病理組織における発現性と乳がん患者予後と統計学的に有意に相関を示し、臨床的意義が認められた。特に長鎖非コードRNAについては、エストロゲン受容体のメッセージRNAの安定性を上昇させることにより、エストロゲン受容体タンパク質の発現を増加させ、エストロゲン作用を増強させることにより、下流の増殖関連因子の発現を上昇させて乳がん病態を悪化させるメカニズムが明らかになった。さらに患者由来がん培養・移植モデルの作製は他のホルモン依存性がん等にも応用し、乳がんのエストロゲン作用ネットワークにおいて重要な機能を担っている因子、特にRNA結合タンパク質と長鎖非コードRNA、およびそれらの標的因子について、他のがん種における作用メカニズムおよび臨床的意義についての解析を進め、研究を展開させている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
研究代表者は国立がん研究センター、金沢大学、東京都健康長寿医療センター等の共同研究者と2017年に「がん三次元培養研究会」を立ち上げ、患者由来がん培養・移植モデルの技術開発とその臨床応用に関する研究会を年1回連続して3回開催し、多くの研究者・関係者と活発な情報交換を行うことができた。第3回がん三次元培養研究会の開催内容について実験医学2020年6月号に報告した。
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