研究課題/領域番号 |
17H04206
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
豊嶋 崇徳 北海道大学, 医学研究院, 教授 (40284096)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GVHD / Dysbiosis / R-Spondin / Goblet cell / Paneth cell / Microbiota |
研究実績の概要 |
1.臨床サンプルを用いた腸内フローラの網羅的解析(国際共同研究) 当該年度には臨床サンプルを用いた腸内フローラの網羅的解析が飛躍的に進展した。これは欧米アジアの代表的な4施設による国際共同研究プロトコールであり、アジアからはわれわれ北海道大学が選ばれた。米国からはMemorial Sloan Kettering Cancer CenterとDuke大学、欧州からはドイツRegensburg大学の計4施設である。造血幹細胞移植症例の移植前,移植後7日目,21日目,35日目,49日目,63日目,90日目,180日目,360日目の糞便を採取し、前年度に整備、確立した方法を用いて、検体を米国に凍結空輸し,メタゲノム解析を実施した。その結果、われわれが前年度までにマウスの研究で明らかにした、腸内フローラの変化と同様な腸内フローラの多様性の喪失がヒトにおいても観察された。興味深いことに、世界の4施設では、人種、食生活や抗生剤の使用パターンが異なるにも拘わらず、全4施設で全く同様の結果がみられ、移植後の普遍的な現象であることが判明した。これは世界初の知見であり、極めて価値あるものとなった。現在、症例毎の臨床情報を収集し、腸内フローラのデータとの関連の解析を開始した。 2.基礎研究 前年までに明らかにしたGVHDによるdysbiosisの影響を調べるため、前年までに注目した小腸のPaneth細胞に続き、大腸のGoblet細胞の検討を行った。GVHD発症マウスではGoblet細胞が減少し、ムチン層の内、腸内細菌の腸上皮内への侵入を防ぐ機能を有する内ムチン層が消失し、腸組織内への細菌の侵入が観察された。これが腸管GVHDの際に敗血症が発症するメカニズムの一つと考えられた。また世界に先駆けてR-Spondin産生細胞がリンパ管内皮細胞であることを同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際共同研究としてのヒト患者検体でのメタゲノム解析は検体処理、輸送なのどの点で詳細な手技、方法を確立する必要があり、解析施設であるMemorial Sloan Kettering Cancer Centerに再遠方である日本からの条件設定は最初は困難を極めたが、試行錯誤を繰り返して安定した検体の精度管理と輸出体制を整備できたことから、今年度大きな進展がみられ、データが得られ始めた点で評価できる。また日米欧で移植後の腸内フローラの経時的変化がほぼ同様であった点で、データの信頼性は高いものと評価される。今後の解析の進行により、世界初の重要なデータが得られることが期待できる。またマウスを用いた基礎研究においても、前年度までの焦点であった小腸のPaneth細胞に引き続き、大腸のGoblet細胞がGVHDの標的であることを明らかにできた。さらに世界に先駆けてR-Spondin産生細胞がリンパ管内皮細胞であることを同定することができた点が評価される。
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今後の研究の推進方策 |
1.臨床サンプルを用いた腸内フローラの網羅的解析(国際共同研究) 今後も世界4施設の一環として北海道大学で移植後患者からの経時的な検体採取を進め、あわせて臨床情報も収集し、研究を継続する。すでに8000以上の検体の解析が終了しており、移植後の腸内フローラの多様性低下、特定菌種の変化と、GVHD、非再発死亡率、再発率、全生存率など、臨床情報との関連を検討し、今年度中の論文化を目指す。 2.基礎研究 マウスでGoblet細胞がGVHDの標的であり、感染症のメカニズムであることが判明したので、今後は臨床での大腸生検病理検体を用いてGoblet細胞数とGVHD重症度、生存などの関連を検討し、マウスからヒトへと研究を進める。
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