研究実績の概要 |
我々はアプローチを変更し、Hut78細胞に様々なtreatmentを施し、インテグリンβ7の活性化を惹き起こすものを探索することにした。その結果、骨髄腫細胞の大きな特徴である小胞体ストレスをツニカマイシンあるいはタプシガルギンで誘導してやることによりインテグリンβ7の活性化が誘導されることを見出した。 MMG49はMn2+存在下においてインテグリンβ7に結合するようになることから、活性型構造特異的抗体であり、骨髄腫細胞では恒常的にインテグリンβ7が活性型構造を取っていることが示唆される。しかしこれまでの研究で、正常リンパ球上のβ7インテグリンが生理的シグナルによって活性化する際の「起き上がり型」構造はほとんど認識しないことがわかっている(Hosen N et al., Nature Medicine, 2017)。すなわち、生理的な構造変換とは質的に異なる、いわば「がん特異的な立体構造」が想定される。実際、インテグリンのコンフォーメーションは、内在化後のユビキチン化効率を左右することが知られており、運動能が亢進したり、分泌経路や膜輸送系が異常に活性化したりしているがん細胞では、正常細胞と異なるものが存在することは十分に予想される。そこで、我々は、骨髄腫細胞において小胞体ストレス下で起こる糖鎖修飾の変化がintegrin β7の構造に変化を起こしていて、それによりMMG49が認識するエピトープが露出するのではないかという仮説をするために、糖鎖生物学者、構造生物学者との共同研究を立ち上げた。
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