研究課題
昨年度に実施した原爆被爆者に発生した骨髄異形成症候群(MDS)の染色体異常を詳細に解析した結果より、近距離被爆者においては自然発症MDSで多く見られる染色体の欠損や数の異常ではなく、転座や逆位という構造異常が有意に増加しており、特に染色体3番、8番、11番の構造異常が有意差をもって増えていることを示した。今年度はそれを基盤として、これまでに収集された原爆被爆者MDSの試料を用いて、次世代シーケンサによる詳細なゲノム解析を開始した。近距離被爆者18名と遠距離被爆者17名について解析可能な試料を収集できた。得られた試料から抽出できたゲノムDNAの量と質、および対象となる検体の有無に応じて解析を行った。近距離被爆者例においてはこれまでの検討で放射線量として5mGy以上の被ばくを受けており、遠距離被爆者例ではそれ未満と考えられた。これらに対して全エクソンシーケンスを16例、全ゲノムシーケンスを3例、ターゲットシーケンスを19例に実施した。その結果、原爆被爆者MDSでは症例当たり5-15個のミスセンス変異とナンセンス変異が同定され、平均は症例当たり9.2個であった。これはこれまでに報告されている自然発症MDS例と比較して増加しているとはいえない結果である。また、変異を有する遺伝子をみると、これまでにMDS発症に係わるとされる、いわゆるドライバー変異として報告されているものがほとんどを占めており、原爆被爆者MDSに特異的と考えられる遺伝子変異は同定されなかった。一方で、自然発症MDSでは最も高頻度に変異が同定される一部の遺伝子においては近距離被爆者例では変異の割合が有意に少なかった。これまでの解析により、原爆被爆者MDSに特異的な遺伝子変異は見られないものの、遺伝子変異フロファイルには特徴がある可能性が示された
2: おおむね順調に進展している
原爆被爆者に発生した骨髄異形成症候群の症例検体を用いた次世代シーケンサーによる解析が進んでおり、全エクソンシーケンス、全ゲノムシーケンス、ターゲットシーケンスを実施することができた。解析データも順調に解釈が進み、その確認実験も問題なく進めることができている。これらより、順調に進展していると判断できる。
原爆被爆者に発生した骨髄異形成症候群症例のゲノム解析を進めて、さらにゲノムコピー数解析を行うとともに、近距離被爆者例における末梢血のゲノム解析を実施する。
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