研究課題
Ⅰ. MPLとの会合、およびSTAT活性化に必須な変異CALRの領域同定と、それを標的とする治療法開発:A. 血球特異的CALRノックアウトマウスを用いて野生型CALRの造血における機能を解析した。現在論文作成中である。B. 変異CALRとMPL結合に必須な領域、および変異CALRによるSTATの恒常的活性化に必須な領域をそれぞれ同定した。結合能とSTAT活性化能、及び細胞内の局在に相関があるのかどうかについて解析を進めている。Ⅱ. 骨髄線維症発症、骨髄線維化進展に要する分子イベントの同定:骨髄線維症において変異がみられるエピジェネティクス調整分子であるEZH2、TET2とCALRの二重変異マウスの作成に成功し、表現型解析を進めている。Ⅲ. Fibrocyteが骨髄線維化に及ぼす影響の同定と、線維化を改善するMEK阻害剤の機序解明:A. Fibrocyteをフローサイトメトリー、免疫染色で検出する系を確立した。CD11bのプロモーター下にdiphtheria toxinreceptor(DTR)を発現するCD11b-DTRマウスにDTを投与し単球を除去する実験系を確立し、JAK2変異マウスにおける単球除去の影響を解析した(論文作成中)。B.骨髄線維症を発症するJAK2変異マウス、線維化を生じずETを発症するCALR変異マウスのfibrocyte数について比較実験を開始した。 C. MEK阻害剤が単球からfibrocyteへの分化に及ぼす影響をin vitro,in vivo両面で解析中である。
2: おおむね順調に進展している
Ⅰ. MPLとの会合、およびSTAT活性化に必須な変異CALRの領域同定と、それを標的とする治療法開発:ノックアウトマウスの樹立と繁殖は予定通り進み、解析が完了した。in vitroの実験に関してもcDNAコンストラクト、各種変異体作成も順調に進んでおり、さらに変異体の細胞内局在を調べる実験系やin vivo発症能を調べる実験系も確立した。Ⅱ. 骨髄線維症発症、骨髄線維化進展に要する分子イベントの同定:骨髄線維症において変異がみられるエピジェネティクス調整分子であるEZH2、TET2とCALRの二重変異マウスの作成に成功した。現在解析を進めている。Ⅲ. Fibrocyteが骨髄線維化に及ぼす影響の同定と、線維化を改善するMEK阻害剤の機序解明: 単球から分化する紡錘形細胞であるFibrocyteをフローサイトメトリー、免疫染色で検出する系を確立した。 CD11bのプロモーター下にdiphtheria toxin receptor(DTR)を発現するCD11b-DTRマウスとJAK2変異マウスの2重変異マウスを作成し、JAK2変異マウスにおける単球除去の影響を解析中である。MEK阻害剤の影響を調べる実験も並行して実施できている。
Ⅰ. MPLとの会合、およびSTAT活性化に必須な変異CALRの領域同定と、標的とする治療法開発:1)野生型CALRの造血における機能同定・・・2018年度の研究を継続する。造血幹細胞の自己複製能、および抗がん剤投与、出血などの危機的造血を検討し、CALRの造血に果たす生理的役割を明らかにする。2)変異CALRとMPLの結合、STAT恒常的活性化に必須な領域の阻害・・・2018年度の研究により同定した、変異CALRがMPLに結合するために必須な領域のペプチドの作成を試みる。Ⅱ. 骨髄線維症発症・進展に要する分子イベントの同定:2018年度に作成した変異CALR/TET2欠損マウス、変異CALR/EZH2欠損マウスの解析を継続する。骨髄線維化、競合連続移植による二重変異造血幹細胞の自己複製能の評価、造血幹細胞の遺伝子発現の網羅的解析を行う。Ⅲ. Fibrocyteが骨髄線維化に及ぼす影響の同定と、線維化を改善するMEK阻害剤の機序解明:2018年度までに確立した解析系を用いて、今年度は下記の研究へと進む。1)ドライバー変異の違いによるfibrocyteの数、質、分化能の同定:骨髄線維症モデルマウス、線維症を発症しないマウスの末梢血fibrocyte数・単球からfibrocyteへの分化能を測定する。2) JAK2変異マウスの単球を試験管内でMEK阻害剤処理し、数の変化、fibrocyteへの分化能が阻害されるかを検討する。更にJAK2変異マウスにMEK阻害薬を投与し、in vivoでの影響も解析する。
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