研究課題
フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、造血幹細胞に体細胞変異が生じ、血液細胞が異常に増える血液疾患である。MPN患者は、QOLの著しい低下を招く脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高く、時に、急性白血病へと病型移行する。現在のところ、リスクを伴う造血幹細胞移植以外には根本的な治療法が無く、発症メカニズムの解明による有効な治療戦略の確立が求められている。そこで本研究では、骨髄増殖性腫瘍(MPN)多発家系の発症原因であるプレ因子を同定し、健常者のiPS細胞にゲノム編集技術を用いてプレ因子やドライバー遺伝子を導入した際に、血液前駆細胞の増殖能や分化能の違いを明らかすることで、MPN発症メカニズムを解明し、将来的なMPNの早期診断や新規治療法の開発を目指している。平成30年度は、平成29年度に樹立した家族性MPN患者のiPS細胞株およびその元となっている患者末梢血から得られたゲノムDNAについて、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子変異解析を行い、MPNにおいて高頻度に見出されるエピジェネティックな変化やスプライシングに関わる遺伝子変異が存在しないことを明らかにした。さらに、アッセイのコントロールとして必要な、ドライバー変異陽性の健常者由来のiPS細胞株を作出するために、JAK2V617F変異をゲノム編集技術により導入し、JAK2V617Fホモ型、ヘテロ型を有するiPS細胞株を樹立した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに家族性MPN患者由来のiPS細胞株の樹立について成功し、さらにその解析も計画通り行っている。家族性MPN患者における「プレ因子」の同定は現在行っている途中であるが、ドライバー遺伝子変異をゲノム編集技術を用いて健常者から樹立したiPS細胞に導入することに成功しており、今後、「プレ因子」の同定の後には同様にゲノム編集を速やかに行うことが可能である。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
これまでに、家族性MPN患者由来のiPS細胞株の樹立に成功し、このiPS細胞株にゲノム編集技術を用いて、標的因子を導入することが可能であることを示せていることから、2019年度以降は、家族性MPN患者のゲノム解析で候補として挙げられているプレ因子を導入して、血球前駆細胞に誘導し、その表現型を比較することで、発症因子の検証を行う予定である。
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Leukemia
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