研究課題
フィラデルフィア染色体陰性骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms; MPN)は、造血幹細胞に体細胞変異が生じることにより、一系統以上の骨髄系細胞のクローナルな増殖をきたす血液疾患である。MPNの予後は一般に良好であるが、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが高い。さらに、骨髄線維化を発症、あるいは骨髄線維症に病型移行すると、全身症状の悪化が進み、QOLが著しく低下する上、高率に予後不良の急性白血病を発症する。このため、骨髄線維を呈する患者の予後は不良である。MPNに対する根本的な治療法は、治療関連死のリスクを伴う造血幹細胞移植に限られるが、MPN患者は高齢者が多いことなどから、移植適応症例はごく少数である。これらのことから、MPN発症メカニズムの解明による、MPNの早期診断と有効な治療戦略の確立が求められている。本研究課題では、申請者らが見出した家族内でMPNを多発する家系員のゲノム配列や樹立したiPS細胞を解析し、MPN発症に関与する因子の探索を行うことを目的としている。このため、昨年度までに健常者から樹立したiPS細胞株に、ゲノム編集技術を用いてJAK2遺伝子にV617 F変異を導入したiPS細胞株を樹立した。本年度は、ゲノム編集を行ったiPS細胞株について、多能性マーカーの発現を確認した後、試験管内において造血幹細胞への分化を誘導した。続いて、CD34陽性の造血幹細胞を含む細胞集団を分取し、分化培地を用いて赤血球や巨核球への分化誘導を行ってから、赤芽球マーカーCD235aや巨核球マーカーCD42bで標識される細胞数をフローサイトメーターを用いて計測した。これらの結果、MPN発症を引き起こすJAK2 V617 変異遺伝子の造血幹細胞の誘導や血球分化における影響が明らかになった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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