研究課題
本年度は基質S1のCRBN非結合型変異体を発現する株をいくつか樹立し、またS1をRNAiによりノックダウンを行ったさいのトランスクリプトーム解析を行った。またS1がF1, F2と融合遺伝子を作ることで白血病などの発症に関わることが判明したことから、S1-F1およびS1-F2融合遺伝子を作製し、その産物が特定のIMiDにより分解されることを明らかにした。またS1のCRBN結合領域についての変異体を用いた解析から、S1のstructural degronについての理解が深まった。IMiDs間で作用が異なってくる変異体などの単離にも成功した。加えて融合遺伝子S1-F1においても、前年度に明らかにしたS1の特定のGlycineを別のアミノ酸に置換することによって分解が抑えられることが分かった。またS1の分解はIMiDにおいては、ベンゼン環上にある特定のアミノ基が重要であることも誘導体を用いた解析から明らかとなった。非基質X1はN末においてCRBNと結合することを明らかにしたが、これまでに知られているような共通のモチーフはないことが判明した。ちなみに非基質X1は骨髄腫などにおいてはノックダウンしてもそれほど大きな作用の変化は検出できなかったが、血管内皮細胞においては、X1をノックダウンすることにより血管新生の阻害が見られた。X1はIMiDsが作用することで知られる血管形成機構に重要であることが示唆された。また前年度に引き続き、プロテオミクス解析を行い、基質候補をいくつか得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
S1の機能解析がかなり進み、またS1分解の意義としてS1-F1融合遺伝子の発症を抑えうることが判明したことが大幅な前進である。S1のCRBN結合領域における理解も深まり、またトランスクリプトーム解析によるS1の支配する遺伝子群についても少しずつ分かってきた。ただX1における部位は、本年度でも完全には決まらなかったので来年度継続して挑戦したいと考えている。全体的には、おおむね順調であると考えている。
S1-F1,F2による血液癌の発症機構を解析するために、融合遺伝子を発現する細胞株を作製する。そして増悪の過程を検証する。またS1-F1による遺伝子発現変化をIMiDsがどのように抑制するのかも検証する。X1の部位を決めて、その部分だけでも共同研究によって構造解析などを実施したいと考えている。これらの成果を合わせることによってIMiDsの作用機構のメカニスティックな基盤の解明を図る。
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J Exp Med.
巻: 215 ページ: 2197-2209
10.1084/jem.20172024