研究課題/領域番号 |
17H04215
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
仲 哲治 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30303936)
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研究分担者 |
藤本 穣 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (00379190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リウマチ学 / 免疫学 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
LRG(Leucine rich α 2 glycoprotein)は、申請者らが関節リウマチ患者血清から見出し、関節リウマチや炎症性腸疾患の検査マーカーとして開発中の炎症関連分子である。最近、LRG がTGF-β シグナルの修飾機能をもつことが示されていることから、LRGは血清マーカーであるのみならず、それ自体がリウマチ病態に直接関わる可能性が高い。本研究では各種細胞株実験やLRG 欠損マウスを使ったリウマチ疾患モデルの解析により、LRG のTGF-β シグナル調節機能の分子生物学的メカニズムを検討し、さらにLRGの病態生理学的意義を解明して、リウマチ疾患の新たな治療戦略を構築することが目標である。 LRG欠損マウスを利用して作製したリウマチモデルマウス(CIA)の解析から得られたデータにより、関節炎の病態におけるLRGは、TGF-β シグナルの炎症増強作用を強化して、炎症を悪化させることが明らかになった。LRGは特にヘルパーT細胞分化の過程において、TGF-βの作用を増強してIL-6への応答性を向上させ、炎症性ヘルパーT細胞サブセット(Th17細胞)分化を増強することで炎症病態を促進することがデータから示唆されている。この結果からLRGを阻害するという治療戦略が、関節リウマチ等の関節炎疾患の克服に有用である可能性が示唆された。リウマチモデルマウスにおいて本治療戦略の有用性をさらに検証するには、抗LRG抗体等によるLRG阻害実験が重要である。そのための抗体スクリーニングが現在も進行中である。なお、CIAモデルマウスの研究成果の主要部分は、リウマチ疾患専門の英文誌に公表ずみである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療標的としてのLRGの意義については、LRG欠損リウマチモデルマウス(コラーゲン誘導性関節炎:CIA)の検討によって明らかにすることが出来た。すなわち、モデルマウスの関節炎臨床スコア、関節への細胞浸潤や関節の骨軟骨病変の組織学検討、IL-17等の炎症性サイトカイン産生量など、いずれの評価項目においてもLRG欠損により病態の改善が認められた。さらにLRGの有無によるヘルパーT細胞分化への影響を検討すると、LRGの存在によりTGF-βの作用増強とIL-6応答性の向上がみられ、Th17細胞分化が促進される結果が得られた。なお、LRGがTGF-βシグナルを増強することは他の実験系でも確認できている。以上より、LRG阻害が関節炎に対する治療戦略として有望であることが示され、研究は順調に進展したと考えている。一方、抗体の機能阻害スクリーニングにおいて、予定していた中和活性の強いモノクローナル抗体の同定に至らず、後述する実験系の追加によって抗体スクリーニングを推進する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
T細胞依存性の関節炎モデル(CIA)については、LRG欠損マウスの検討によって、上述のようにLRGの意義を明らかにすることが出来た。今後、へルパーT 細胞非依存性の関節炎モデルとしてコラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)モデルを用い、LRG の作用についてさらに検討を行っていく。なお、われわれの検討では、LRG欠損マウスでLPSへの感受性が減弱している可能性が示唆される。そこで、CAIAモデルの病態解析にあたっては、疾患誘導に用いるLPSに対するLRGの作用についても併せて考慮しておく必要がある。 一方、LRGを中和する抗体の選択を進めるために、TGF-βシグナルを簡便にモニターできる培養細胞系(HEK-Blue TGF-beta cells)での検討に切り換え、スクリーニング効率を上げて実験を続ける。中和活性の良好なクローンを決定し、それを改変してマウス化キメラ抗体を作製しin vivo実験へと応用していく。 また、LRGのシグナル調節メカニズムの検討として、WangらがLRGと結合する分子として報告したendoglin分子に着目して細胞レベルでの検討を行っていく。endoglinはTGFβ受容体システムを構成する膜タンパクのひとつとして血管内皮細胞に発現することで知られる分子であり、ヘルパーT細胞に発現していない可能性がある。その場合は他の細胞株を使用するなどしてTGF-βの細胞内シグナルに対するLRGの作用の検討を進めたい。
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