HIV-1の増殖は薬剤で抑えられるようになったが、感染者は生涯服薬を強いられる。一部のウイルスが潜伏感染し、完全に排除しきれないためである。静止期のCD4+ T細胞での潜伏感染が良く知られているが排除する治療法はまだない。そして静止期CD4+ T細胞以外での潜伏感染も明らかとなっているが、細胞としての実体には不明の点が多い。そのため、CD4+ T細胞と並ぶHIV-1主要標的「単球・マクロファージ」に着目した 研究の重要性が高まっている。 我々はHIV-1と単球・マクロファージの相互作用について長年、研究してきたが、本研究により単球・マクロファージの亜集団であり、幹細胞マーカーCD34が陽性のfibrocytesがHIV-1潜伏感染細胞である可能性を見出してきた。無治療のHIV-1慢性感染者の末梢血中 fibrocytesに全例でHIV-1プロウイルス(細胞の染色体に組み込まれたウイルスゲノム)を検出し、その頻度は通常の単球よりも明らかに高く、つまりHIV-1に高感受性であった。そこで同様の解析を長期治療感染者でも行った。その頻度解析の結果、fibrocytesが静止期CD4+ T細胞に匹敵する重要な潜伏感染細胞であり、症例によっては(12.5%:16例 中2例)、fibrocytesに高頻度に潜伏感染することを見出してきた。近年、 大半のプロウイルスには変異や欠失があり、それらからは感染性のあるウイルス粒子が産生されないことが報告されている。本感染者末梢血解析においては、倫理的な観点から限られた細胞数から出発したため、fibrocytesから感染性ウイルスが産生されると言う証拠は得られなかったが、プロウイルス出現頻度が静止期CD4+ T細胞と同等であることから今後の解析が重要である。
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