研究課題
近年、化合物のフッ素修飾による薬物動態の改善が報告されている。化合物のフッ素化は、(1) 代謝による薬剤の不活性化を遅延させ服薬回数を減らす、(2) 化合物の脂溶性を向上、細胞膜透過性を増大させ、良好な経口吸収率が得られる傾向があるといった利点の他に (3) フッ素が標的タンパク質とのハロゲン結合形成による結合力・親和性の向上が示唆されている。本研究では、フッ素を含むハロゲン元素の導入をした化合物群を設計・合成し、HIV野生株(HIVWT) 及び多剤耐性株 (HIVMDRs) を強力に阻害し、良好な薬物動態を示す新規HIVプロテアーゼ阻害剤 (PIs) の開発を目的とした。令和元年度は、P1-bisFBzに適したP2及びP2’領域の構造を検討した。Pheのmeta位に2つのフッ素元素を修飾した部分構造 (P1-bis-fluoro-benzene; P1-bisFBz)を持ち、P2 及び P2’ に異なる構造を持つ種々の化合物を合成、抗ウイルス活性を測定した。結果、P2用域にcrown-THF (crnTHF) 構造、P2’ 領域にcyclopropyl-amino-benzothiazole (Cp-Abt) 構造を持つ化合物がHIVWT及びHIVMDRsに対して最も高い活性を示した。また、P1-bisFBzを持ち、P2領域にbis-THF, Tp-THFおよびcrnTHFを有する化合物の脳移行性を検討し、これらの化合物が良好な脳移行性を発揮する事を示した。更に、P2領域にaminoalkyl-Tp-THF構造を持つ化合物群のCYP耐性を検討、P1-bisFBzを持つGRL-037がDRVより高いCYP耐性を持つ事を見出した。本研究成果は、HIV感染患者の高齢化によるHIV関連神経認知障害 (HAND) 増加や、一回の服用で長期間薬効を維持する新規PIsの発展に資する。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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