研究課題
小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)の初発、再発検体を用いてクローン進化の検討を行い、NOTCH1が白血病化と再発の両方に重要なドライバーであることを見出した。また神経芽腫の再発、転移腫瘍を含む90例のオープンデータをもとにexome解析、RNAシーケンス解析、メチル化解析のデータを解析し、治療抵抗性に関連する分子病態につき検討したところ、11p欠失を有する群にウルトラ高リスク群を同定し、候補治療標的を同定した。当該遺伝子をノックダウンすると細胞増殖が抑制された。神経芽腫以外の小児固形腫瘍200例につき公開データを用いてALKの発現の検討を行った。その結果、Ewing肉腫、横紋肉腫、肝芽腫の一部で、発現上昇が確認された。Ewing肉腫に関しては、100例中1例においてALKのintron4のexon-intron領域に1塩基変異を検出した。ゲノム編集技術を用いて、この変異によるスプライシングの異常につき検討を進めている。また肝芽腫と横紋筋肉腫においては、ALK発現陽性腫瘍においてALK領域のゲノムコピー数の増加も確認され、ゲノムコピー数の増加が発現上昇に関連している可能性が示唆された。横紋筋肉腫とEwing肉腫の細胞株を用いたALK阻害剤の細胞増殖に対する影響を検討したところ、Ewing肉腫細胞株において、神経芽腫細胞株と同等のIC50値が検出された。TARGETの公開データをもとに、横紋筋肉腫メチル化と発現データをもとにクラスタリング解析を行った。その結果、メチル化プロファイルの違いにより、4群に分類され、それぞれ組織型と強い相関を示した。また発現データによる遺伝子変異の検討からメチル化クラスターの4群は、先行研究におけるメチル化サブグループと一致する可能性が高いことが示され、別コホートにおける再現性が確認された。
2: おおむね順調に進展している
小児T細胞性急性リンパ性白血病のクローン進化のメカニズムの一部を解明し、神経芽腫の治療標的の候補を同定した。また横紋筋肉腫においてメチル化プロファイリングのクラスタリングに関して、再現性を確認したため、おおむね順調に進展している。
今後は治療抵抗性の小児固形腫瘍に焦点をあてて、遺伝子の発現制御に重要なプロモーター、エンハンサー領域などゲノム上の制御エレメントのキャプチャーシーケンスを展開し、蛋白の翻訳領域に異常を持たない腫瘍の分子病態、不均一性の解明を目指す。対象は、神経芽腫、横紋筋肉腫、肝腫瘍・骨肉腫などその他の肉腫とする。また難治化の機序を解明するために同一症例のマルチサンプリング検体が得られるものに焦点をあてて解析を進める。更に、米国の50種類以上のがん腫の10,000以上の検体のDNA、RNAシーケンスデータが蓄積されているTCGA (https://tcga-data.nci.nih.gov/tcga/)に登録されている全ゲノムシーケンスデータを用いたイントロジェニックなゲノムの構造異常の検討も行う。同時に、染色体の転写がオンになった領域をサーベイするためにChipシーケンス、ATACシークエンスも試みる。プロモーター領域と一部のエンハンサー領域および21,000遺伝子のコーディング領域約114Mbの領域のキャプチャーベイトを用いて、各腫瘍のキャプチャーシーケンスを行う。これによりregulatory elements約60Mbのキャプチャーが可能である。異常が見いだされた領域に関しては、validation cohort(約600例)で頻度の検証を行う。解析予定検体としては、神経芽腫30-50検体、横紋筋肉腫30検体、その他の肉腫10検体とする。見出されたゲノム異常に関しては、その病的意義を検討するために、さらに大規模なコホートを用いて頻度の検証を行うと同時にトランスクリプトーム解析を行い、候補ゲノム異常の発現系に及ぼす影響について検討する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (46件)
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