研究課題/領域番号 |
17H04225
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大津 真 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30361330)
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研究分担者 |
小野寺 雅史 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 成育遺伝研究部, 部長 (10334062)
森尾 友宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30239628)
頼 貞儀 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (30739925) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / ゲノム編集 / ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
平成29年度には、重症型 WAS 患者骨髓細胞より樹立した WASP 完全欠損 iPS(WAS-iPS)細胞に対して CRISPR/Cas9 システムを用いたゲノム編集を試み、患者特異的遺伝子変異配列の修復に成功した。さらに WAS-iPS細胞に2種類のレンチウイルスベクターを用いた遺伝子付加的処置を施し樹立したバルク細胞株について、シングルセルクローニングを行い、相当数の遺伝子治療モデル WAS-iPSクローンを獲得した。 これらについて、digital droplet PCR 法により正確なベクターコピー数評価を行い、異なるベクター構造(臨床遺伝子治療で使用されている1.6 Kb WASP 遺伝子人工プロモーターと恒常的発現プロモーター)、異なるコピー数をゲノム上に有するクローンからなる、遺伝子治療細胞パネルを構築した。現在、これら被験細胞について、iPS 細胞から種々の造血細胞への分化誘導を行い、WASP蛋白の発現比較を開始している。 さらに、遺伝子治療後の細胞における客観的な機能回復の評価を可能にする分化培養系、機能アッセイ系の構築にも取り組んだ。結果、造血前駆細胞段階におけるサイトカイン反応性、コロニー形成能、巨核球・血小板系における産生不全の評価系に加えて、単球・マクロファージ系における機能異常を見出し、評価系のさらなる整備、機能修復の定量的評価、比較を試みている。 これらの成果の一部は、第38回日本炎症・再生医学会、第23回日本遺伝子細胞治療学会、および第46回日本免疫学会学術集会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、究極の遺伝子治療法の確立に寄与することである。「究極」の実現には、より高い安全性とより高い有効性を同時に担保することが重要である。現行の遺伝子治療における治療の実態は、ウイルスベクターを用いた「遺伝子付加」を行うことであり、その中で究極を目指すときに、ベクター構造、コピー数と、蛋白発現、目的細胞における機能修復との関係を可能な限り精緻に検討する実験系の構築が欠かせない。得られた遺伝子治療をモデル化するiPS細胞パネルは、その目的を達成するための重要な研究材料であり、初年度においてこれを構築できたことの意義を考慮し、研究が順調に進捗しているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
まずは確立したiPS細胞パネルを用いてベクター構造、コピー数と、蛋白発現、目的細胞における機能修復との関係を明らかにする。得られる結論によって理想の遺伝子治療に必要な要件を見出し、個々の課題解決を図る。WASはX染色体遺伝子におけるloss-of-function疾患であること、WASPの発現が造血細胞に限局していることから、究極の遺伝子治療は、造血幹細胞における遺伝子修復である。ゲノム編集技術の進捗にも留意しながら、遺伝子付加法を極める方向性の妥当性についても考慮しつつ、新たな人工プロモーター開発、部位特異的ベクター組み込み等、適宜取捨選択を行い研究を進める。
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