研究課題
我々はMLL-ENL誘導発現型トランスジェニックマウスを用いた解析から自己複製関連遺伝子PLZFの下流遺伝子としてハエの眼の発生に関与するEya2を同定し、Eya2が PLZFによる造血幹・前駆細胞の不死化のみならず、急性前骨髄球性白血病の原因遺伝子であるPLZF-RARAやPML-RARAによるがん化においても重要な役割を担うことを明らかにしてきた。今回、小児白血病の中で最も予後不良な疾患のひとつとされる、t(17;19)(q22;p13)急性リンパ性白血病の原因遺伝子であるE2A-HLFの下流でもEya2の高発現が見られることを見出し、E2A-HLFで不死化したマウス骨髄細胞においてshRNAによるノックダウン実験などを行った結果、白血病幹・前駆細胞の自己複製においてEya2が重要な役割を担っていることを明らかにした(Maharjan BD et al., Int J Oncol 54: 981-990, 2019)。エピゲノム修飾遺伝子Tet1のコンディショナルノックアウトマウス(当研究室で独自に作製)とMLL-ENL誘導発現型トランスジェニックマウスを用いた交配実験の方は、骨髄移植実験と組み合わせることによって、MLL-ENLによる白血病幹細胞生成・白血病発症の際、Tet1の有無で造血細胞分化段階特異的に表現型が有意に変わるという興味深い現象が観察された。現在、littermate controlを用いて再現性の確認を慎重に行っている。
3: やや遅れている
Eya2関連実験は留学生の出産による産休などで、やや控えめに進行したが、復帰後は、おおむね順調である。 Tet1関連実験の方は、誘導発現トランスジェニックマウスとコンディショナルノックアウトマウスの交配実験において非常に興味深い成果が得られつつあり、現在、littermate間での厳密な比較による確認を行っている。本科研費により新たに技術補佐員を雇用することができたので、マウスの維持、交配、骨髄移植実験、FACS解析など、研究代表者と連携研究者のみでは全てを実施することが困難だった実験も比較的着実に進行している。しかしながら、全体的に見ると、複雑な交配過程を伴うマウス表現型の再現性の確認などに予想外に時間がかかり、エピジェネティクス解析が遅れている感は否めない。
Eya2関連の方は上流分子による遺伝子発現調節機構やEya2自身による自己複製への関与をさらに明確にすることよって白血病幹細胞生成機構の全容解明に少しでも近づけたい。 Tet1関連の方は、標的遺伝子を絞った後、Tet1によるそのエピジェネティクス調節を中心に詳細な解析を行い、Tet1の新たな生理・病理機能を探索しながら白血病幹細胞生成の全容解明につなげていきたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Int J Oncol
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