研究課題/領域番号 |
17H04229
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大賀 正一 九州大学, 医学研究院, 教授 (60233053)
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研究分担者 |
田口 智章 九州大学, 医学研究院, 教授 (20197247)
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30415195)
山座 孝義 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (80304814)
長谷川 俊史 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90314806)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 間葉系細胞 / 肝様細胞 / 肝不全 / ウィルソン病 / チロシン血症 |
研究実績の概要 |
ヒト臍帯および臍帯血細胞を用いてそれぞれの間葉系細胞(MSC)を樹立した。しかしながら、肝様細胞への分化誘導が不十分でこれらの細胞由来MSCの特性比較が困難なため、ヒト乳歯由来MSC (SHED)の肝保護および肝再生効果を2つの肝不全モデル動物を用いて解析した。肝不全モデルラットと同系対照にSHEDとSHED肝様細胞を移植して、肝不全治療の効果を検討した。Atp7bに変異があるWilson病(WD)モデルLong-Evans Cinnamon(LEC)ラットに銅負荷食餌を与え、致死的劇症型WDモデルを作製した。この劇症型WDモデルLECラットにSHEDおよびSHED肝様細胞を移植して治療効果を比較した。ATP7Bを発現しているSHED肝様細胞は、ATP7B発現のないSHEDに比べ、ATP7Bを介した銅耐性能によって、劇症型WDモデルLECラットの生存期間を有意に延長させた。SHED肝様細胞移植はSHEDより、レシピエントの肝機能障害と組織傷害に対してより高い改善効果をもたらした。さらに、SHED肝様細胞は、ATP7Bと独立してstanniocalcin-1を分泌しており、銅毒性による活性酸素の組織傷害をオートクライン的あるいはパラクライン的に抑制することが示唆された。SHED肝様細胞が移植後肝への長期生着効果は証明が困難だったが、この細胞集団が劇症型WDに対して肝保護作用を有し、肝移植までの橋渡しおよび肝不全発症予防を目的とした細胞療法源となる可能性が示された。もうひとつ、チロシン血症モデル(Fah-/-)マウスに、NTBCを投与した肝不全モデルを作成した。これにSHEDを移植したところ生存期間の明らかな延長はなかったが、体重と肝重量の低下および機能増悪に有意な軽減効果を確認することができた。現在、この肝組織保護と再生効果について解析をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト臍帯および臍帯血細胞を用いてそれぞれの間葉系細胞(MSC)を樹立することができたものの、肝様細胞への分化誘導が不十分であったため、これらの細胞由来MSCの特性比較が困難となった。しかし、その後肝不全動物モデルをWilson病ラットとチロシン血症マウスでそれぞれ作成することができたので、これらに対するヒト乳歯由来MSC (SHED)の肝保護および肝再生効果を解析することができた。前者の解析は、SHEDとSHED肝様細胞を比較して進み、成果を欧文氏に投稿することができた。現在、チロシン血症マウスの解析を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
1)劇症Wilson病モデルラットへのヒト間葉系細胞移植の効果 肝不全モデルラットへの移植実験解析を継続する。Wilson病モデルLEAラットと同系対照LECにヒト乳歯髄由来の間葉系細胞(SHED)を移植して、異種間での肝庇護効果と肝再生効果のメカニズムを解析する。SHED肝様細胞とnaive SHEDの効果の差に焦点を絞る。
2)チロシン血症モデルマウスにおける肝庇護効果の評価 肝不全モデルマウスへの移植実験解析をすすめる。このチロシン血症モデルにSHEDを移植して、異種間での肝庇護効果と肝再生効果のメカニズムを解析する。SHED肝様細胞のとくに可溶性因子を介した肝庇護効果に焦点を絞り、以下の方法で検討する。肝組織再生効果については、生存率、体重、免疫学的および病理学的に解析する。肝組織は、形態学的(免疫蛍光染色)および生化学的/分子生物学的(RT-PCR法,Western blotting法,ELISA法)手法を用いて、肝障害の程度、キメラ、各種生体活性物質の代謝に必須の酵素群(チトクロームなど)の発現を解析する。
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