研究課題
本研究は異常第VIII因子を有する中等症/軽症血友病A患者の分子生物学的および生化学的解析により第VIII因子機能に必須のアミノ酸残基を同定して、様々な変異を導入発現することにより高機能型第VIII因子の創出を目的とする。本年度は異常第VIII因子を有する中等症/軽症血友病A患者の遺伝子解析を行い、活性型第X因子生性能について血漿検体を用いた高感度な測定系の確立をめざした。奈良県立医科大学小児科通院中の軽症・中等症血友病A患者38例に対してF8遺伝子解析を施行し、新規変異2例(Asp361Val, His693Asn)を含む28種類の異なるミスセンス変異を同定した。そのうち、17例の血漿を用いたFXa生成における反応速度論的解析を施行した。結果、FIXa、PLまたはFXとの親和性が低下する例がそれぞれ5、6、5例であり、トロンビン開裂部位であるArg372に変異(Arg372His)をきたす症例では、FIXa、PL、FXのいずれに対する親和性も低下した。更に、反応測定の過程で析出するフィブリン結晶に伴う影響を除去する目的で、レプチラーゼによる前処置を加えて、上記のうち10例について評価検討した結果、7例において、 FIXa、PL、FXに対する親和性がレプチラーゼ処理前後で一致し、レプラーゼ添加によっても評価可能であることが示された。一方、2例は処理後のFXa生成量が低下したため評価困難であり、残る1例は、処理前後で結果が不一致を示し、その原因について検討中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、軽症・中等症血友病A患者38例に対してF8遺伝子解析を施行し、新規変異2例を含む28種類の異なるミスセンス変異を同定し、そのうち、17例の血漿について、特異的な合成発色基質を用いたFXa生成における反応速度論的解析を施行した。その結果、FIXa、PLまたはFXとの親和性に基づき、FVIII変異の特性をいくつかのタイプに分類することができ、その成果を第39回日本血栓止血学会学術集会(愛知県)にて報告した。
さらに軽症・中等症血友病A患者症例数を増やしてF8遺伝子解析を施行し、血漿を用いたFXa生成における反応速度論解析を進行する。一方、FXa生成反応測定条件の更なる改良を加えるとともに、レプチラーゼを用いた血漿試料の脱フィブリン化処理による評価検討を進行し、より高感度な測定系の確立を目指すとともに次年度の研究計画を進める。
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