研究課題/領域番号 |
17H04231
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
嶋 緑倫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30162663)
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研究分担者 |
武山 雅博 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30572010)
矢田 弘史 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30635785)
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
松本 智子 天理医療大学, 医療学部, 助教 (80642678)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血友病A / 第VIII因子 / 第X因子 / 第IX因子 |
研究実績の概要 |
軽症・中等症血友病A患者11例において新規変異2例(Pro2310Ala, Glu2228Lys)を含む10種類のミスセンス変異を同定した。患者血漿を用いてFXa生成反応速度論的解析を施行した。FX結合領域の変異であるAsp361Val患者血漿ではFX親和性が低下し、FVIII A2-A3ドメイン間結合表面上の変異His693Asn患者血漿では、FIXa親和性が低下した。Arg531Cysについて、BHK細胞株を用いて変異体を発現精製した結果、野生型FVIIIに比べて、Arg531CysではFIXa親和性低下がみられた。さらに、三次元構造解析の結果、FIXa親和性低下を示す変異は、いずれもドメイン間表面上あるいはFVIII分子表面上に位置し、FIXaとの結合が障害されること、FXまたはPLとの親和性低下例では、FVIII分子表面の結合領域における変異のみならず、分子内部の変異による立体構造変化が生じている可能性が示唆された。さらに、変異FVIII(E1811A, K1813A, F1816A, K1818A, K1813A/K1818A)を作成し、変異FVIIIとFIXaとの親和性をSPR-based assayで検討したところ、wild type FVIII (Kd; 6.3 nM)と比較して、K1813A (Kd; 3.9 nM)はFIXaとの親和性が亢進していた。さらに、FXa生成試験によると、K1813A (Km; 4.5 nM), K1818A (Km; 4.5 nM), K1813A/K1818A (Km; 3.0 nM)とFIXaとのKmはwild type FVIII (Km; 6.6 nM)とFIXaとのKmと比較して、低値であった。以上の結果から、K1813AはFIXaとの高い親和性を有する高機能変異FVIIIであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出血症状に関する様々なフェノタイプを有する中等症/軽症血友病A患者の遺伝子異常の解析結果に基づき、BHK細胞で発現した変異第VIII因子蛋白と活性型第IX因子、第X因子およびリン脂質との結合性、および3次元構造解析により高機能型第VIII因子を探索するシステムを構築した。さらに、活性型第IX因子との親和性が高い高機能型変異第VIII因子の候補を創製できたことは重要な研究成果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
高機能型第VIII因子(FVIII)を創製するために、より、多数のアミノ酸変異を有する変異蛋白を精製する。3次元構造解析も加えて、より効率的に機能必須アミノ酸を探索する。さらに、BHKおよびHEK細胞で発現した変異FVIIIをFVIII欠乏血漿や全血に添加することにより血友病Aのex vivoモデルを作成し、凝固波形解析、FXa生成、トロンビン/プラスミン生成試験などの包括的凝固線溶機能解析も実施して、変異FVIIIを評価し、より高機能な第VIII因子の創製をめざす。今後はさらに、抗FVIIIインヒビターを発生しにくく、インヒビター存在下でも有効な低免疫原性高機能型第VIII因子の作製も行う。
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