研究実績の概要 |
奈良県立医科大学小児科に通院中の軽症・中等症血友病A患者にみられたF8変異のうち、変異に基づく凝固機能障害機序がすでに報告されている3つのFVIII変異体(Arg531Cys、Pro1809Leu、Arg372Ala)を発現精製し、それぞれをFVIII欠乏血漿に添加して得た軽症血友病Aモデル血漿を用いて、FXa生成解析を行った。野生型FVIIIに比べて、Arg531CysではFX及びPLとの親和性は同等であったのに対してFIXaとの親和性が低下した。Pro1809LeuではFIXa、FXとの親和性は野生型FVIIIと同等であったがPLとの親和性が低下した。これらの結果は、純化精製系で行ったFXa生成反応と同様の傾向を示した。また、これらは、昨年度までの検討で得られた、同変異を有する患者血漿を用いたFXa生成試験による結果とも一致した。本年度は,さらに、変異FVIII(E1811A, K1813A, F1816A, K1818A, K1813A/K1818A)を作成した。これら変異FVIIIとFIXaとの親和性をSPR-based assayで検討したところ、wild type FVIII (Kd; 6.3 nM)と比較して、K1813A (Kd; 3.9 nM)はFIXaとの親和性が亢進していた。一方、E1811A (Kd; 6.3 nM), K1818A (Kd; 5.1 nM), K1813A/K1818A (4.7 nM)とFIXaとの親和性はwild type FVIIIと同等であり、F1816A (Kd; 9.1 nM)とFIXaとの親和性はwild type FVIIIより低下していた。さらに、FXa生成試験によると、K1813A (Km; 4.5 nM), K1818A (Km; 4.5 nM), K1813A/K1818A (Km; 3.0 nM)とFIXaとのKmはwild type FVIII (Km; 6.6 nM)とFIXaとのKmと比較して、低値であった。以上の結果から、K1813AはFIXaとの親和性が高い変異FVIIIであることが示された。本変異型FVIIIは高機能型FVIIIのモデルになることが示唆された。
|