研究課題/領域番号 |
17H04234
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
加藤 元博 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 小児血液・腫瘍研究部, 医長 (40708690)
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研究分担者 |
中林 一彦 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期病態研究部, 室長 (10415557)
内山 徹 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 成育遺伝研究部, 室長 (10436107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌 |
研究実績の概要 |
本研究は、小児白血病の中で現在の標準治療をもってしても再発する症例や、標準的な用量の治療でも重篤な合併症をきたす「outlier」に焦点を絞り、白血病細胞に生じた体細胞変異についてのゲノム解析と、生殖細胞系列のゲノム解析とを統合することで、「outlier」たる分子病態の基盤を明らかにすることが目的である。 急性前骨髄性白血病の中で、典型的なRARA転座が検出できない症例に着目してゲノム解析を行い、対象とした5例中4例がRARB転座を持つことを明らかにした。新たに特定したRARB転座は、RARA転座と同様にレチノイン酸経路を抑制し、細胞の分化を停止させ増殖活性をもたらすことで悪性形質の獲得に寄与していることが確認できた。一般的な急性前骨髄性白血病は、長期生存率が80-90%に至っているが、対象とした5例の無イベント生存率は20%と低く、新たな治療戦略の構築が必要なサブグループを特定する成果と考えられる(論文投稿中)。 また、急性リンパ性白血病の治療に用いるメルカプトプリンの感受性に影響を及ぼすNUDT15多型の正確なアレルごとのタイピング方法を確立し、有害事象の予測を可能にする成果につなげた(論文投稿中)。 さらに、先天性の骨髄不全症を対象としたゲノム解析から、骨髄不全症の原因としてMECOM遺伝子の生殖細胞系列の変異が関与することを明らかにした(Osumi T et al. Pediatr Blood Cancer 2017)。 このように、小児の血液・腫瘍疾患のゲノム解析を包括的に行うことで、非典型な「outlier」の分子病態の理解を深める成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに非典型的な小児血液疾患の症例を集積しゲノム解析及び機能解析を遂行でき、病態の解明につながる新規の発見につなげることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を活かし、さらに他の非典型的な経過をとる小児血液・腫瘍疾患を集積してゲノム解析を行う。 また、昨年度までの成果として得られた新規の転座について、治療標的となりうるような分子の探索を行い、治療への応用についてさらなる発展を狙う。
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