研究課題
本研究は、小児白血病の中で臨床的な「outlier」に焦点を絞り、体細胞変異と生殖細胞系列変異の両者の観点から「outlier」たる分子遺伝学的基盤を明らかにすることが目的である。急性前骨髄性白血病の中で、典型的なRARA転座が検出されない症例を集積して集中的なゲノム解析を行った結果、新規のTBL1XR1-RARB転座を特定した。この転座はレチノイン酸経路をdominant negativeに抑制することで白血病の発症に貢献するだけでなく、典型的な急性前骨髄性白血病に著効する合成レチノイドが無効であることも確認された。急性前骨髄性白血病の一部を占める新たな疾患群につながる知見である(Osumi T et al. Cancer Res 2018)。また、急性リンパ性白血病の中で極端に6-mercaptopurine(6MP)への感受性が高い患者の原因となるNUDT15多型について、複数の多型を持つ場合に正確なアレル構成を把握するdiplotype法を開発し、より精密に6MPの感受性を予測することを可能にした。また、NUDT15多型のある患者でもメソトレキセートへの感受性は低下していないことを示した(Tsujimoto S et al. Leukemia 2018)。その他、混合型白血病の解析からMLL-USP2遺伝子を特定し(Ikeda J et al. Genes Chromosomes Cancer 2019)、さらに治療反応不良な乳児白血病の検体に対して全トランスクリプトーム解析を行った結果から新規の融合遺伝子MLL-ACTN2を特定した(Yoshida M et al. 投稿中)。このように、「outlier」の解析を通じて新たな知見が得られ、結果的には「outlier」でない一般の小児白血病の全体の病態の理解につながる成果が達成できている。
2: おおむね順調に進展している
計画通りの解析で、病態の理解につながる新たな発見が得られている。
ここまでの成功を踏まえ、現在の戦略での解析を進める。さらに、多数例での解析を行うとともに、小児白血病の根幹である生殖細胞系列の遺伝学的病態の理解についてはさらに中心的に勧める。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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