研究課題
本研究は、小児白血病の中で臨床的な「Outlier」に焦点を絞り、さらに体細胞変異と生殖細胞系列変異の両者の観点から「Outlier」たる分子遺伝学的基盤を明らかにすることが目的である。令和元年度は、以下の解析を通じて病態の理解を深める成果を得た。・急性前骨髄性白血病の大部分はレチノイン酸受容体の転座を持つことを昨年度前の成果で示した。しかし、従来のFISH法ではレチノイン酸受容体遺伝子の転座が検出できなかった急性前骨髄性白血病に着目して詳細なゲノム解析を行い、微小な領域の挿入によるTBL1XR1-RARA融合遺伝子が生成されていることを見出した(Osumi T et al. Genes Chromosomes Cancer 2019)。・乳児発症の急性リンパ性白血病であり、かつ移植後に再発をした難治例の検体を用いた解析を通じて、新規の融合遺伝子KMT2A-ACTN2転座を同定した(Yoshida M et al. Pediatr Blood Cancer 2019)。・予後不良因子である7番染色体の欠失を伴う造血器疾患を発症した患者25名のゲノム解析を行い、生殖細胞系列に検出されたバリアントの意義を機能解析で確認した。GATA2のバリアントを7名で、SAMD9/9Lのバリアントを4名で見出した。解析した40%の患者で遺伝的な背景が病態に関与していることが示され、小児白血病の病態に生殖細胞系列の遺伝的背景が関与していることを確認した(Yoshida M et al. under submission)。いずれの結果も、臨床的な非典型例に着目して解析することで、その病態に関与する特徴的なゲノム異常を特定することができ、造血器腫瘍の病態の理解を深める成果である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Pediatric Blood & Cancer
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