研究課題
本年度は第1に、成熟児の低酸素性虚血性脳症(hypoxic-ischemic encephalopathy: HIE)モデルマウスに対するト羊水幹細胞(human amniotic fluid stem cell: hAFS)の治療効果について、世界に先駆けて英文誌上で論文発表を行った。周産期脳障害の主要因は、HIEと早産脳障害であることが知られているが、早産脳障害は主に発達途上の脳神経系細胞が感染・炎症や低酸素等により障害を受け、不可逆性の障害へと進行することが知られている。このため、本年度は第2に、hAFSの早産脳障害のモデルとしてリポポリサッカライド(LPS)誘発性新生仔敗血症モデルラットを用いてhAFSの治療効果を検討した。具体的には、生後3日目のSDラットを用いてLPS誘発性新生仔敗血症モデルラットを作成し、hAFSを腹腔内投与し治療効果を検討した。その結果、非治療群では生存率が約50%であったが、治療群では約80%の生存率に有意に上昇した。また、脳神経系細胞の炎症変化をはじめ全身臓器(脳、肺、肝臓、腎臓)の炎症性障害を有意に軽減することを見出した。脳性麻痺の主要因は、HIEと早産脳障害であるが、一旦脳性麻痺へと進行すると根本的な治療法が存在しない。しかし、本年度の研究成果として、HIEと早産脳障害を模倣した2つの動物モデルにおいてhAFSの治療効果を世界に先駆けて明らかにした。臨床的に、「脳性麻痺の発症リスクが高い妊婦を選別し、その羊水を採取し、分娩までにhAFSを分離・培養・調整しておき、出生直後の新生児に自己羊水由来のhAFS移植治療を行う」といった治療計画が考えられるが、本年度の研究成果はそのコンセプトを動物実験において示したものであり、上記の臨床応用に向けた大きな前進であると考える。
2: おおむね順調に進展している
脳性麻痺の主要因は、HIEと早産脳障害であることが知られているが根本的な治療法が存在しない。しかし、本年度の研究成果として、HIEと早産脳障害を模倣した2つの動物モデルにおいてヒト羊水幹細胞(human amniotic fluid stem cell:hAFS)の治療効果を世界に先駆けて明らかにした。臨床的には、「脳性麻痺の発症リスクが高い妊婦を選別し、その羊水を採取し、分娩までにhAFSを分離・培養・調整しておき,出生直後の新生児に自己羊水由来のhAFS移植治療を行う」といった治療計画が立案されるが、本年度の研究成果はその治療コンセプトを動物実験において示したものであると考える。
本年度は第1に、てLPS誘発性新生仔敗血症モデルラットに対するヒト羊水幹細胞(human amniotic fluid stem cell:hAFS)の治療効果について、全身臓器(脳、肺、肝臓、腎臓)の病理組織像の解析や、治療のメカニズムについて免疫学的な観点を中心に検討を行う計画とする。さらに、長期生存したLPS誘発性新生仔敗血症モデルラットを用いて、治療群、非治療群の間で、運動能や認知能など の表現系の差異について検討する。本研究課題は、当初、脳障害のほかにも、新生児慢性肺疾患と壊死性腸炎への治療効果検討を計画していたが、予想より早く周産期脳障害への治療コンセプトを動物実験において示すことができたため、周産期脳障害を適応とした自己羊水由来のhAFS治療を早期に臨床応用すべき必要性が生じてきた。このため、研究計画の一部を変更し、早期の臨床応用への橋渡しとして、アニマルフリーな環境でのhAFS細胞培養、間葉系幹細胞マーカーを用いた幹細胞分離、について検討を行う計画としたい。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 19件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
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