研究課題/領域番号 |
17H04237
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所) |
研究代表者 |
柳原 格 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 部長 (60314415)
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研究分担者 |
林 克彦 九州大学, 医学研究院, 教授 (20287486)
西海 史子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 流動研究員 (60599596)
呉 恒寧 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 研究技術員 (80648139)
吉村 芳修 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 研究員 (90771197)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ES/iPS / 卵子形成過程再構築 / ウレアプラズマ |
研究実績の概要 |
国内の周産期医療施設から病原体解析依頼を受けた。その中で、国内初となるオウム病病原体による妊産婦死亡症例、世界で2例目となるEdwardsiella tarda胎内感染後の新生児脳膿瘍の症例の病原体同定を行った。 流早産症例からUreaplasmaの菌株を同定、分離している。U. parvum は宿主細胞に感染後クラスリン依存性のエンドサイトーシスで取り込まれた後、初期エンドソームから後期エンドソームへと移動し、取り込まれたU. parvumの一部がオートファジーによって分解されていた。他方、細胞内に取り込まれたU. parvumの一部はオートファジー経路を逸脱し、少なくとも10日間宿主細胞内で生存した。今回は、細胞内に侵入し生き延びたU. parvumのその後の挙動について解析した。宿主細胞内に取り込まれたU. parvumの一部は、リサイクリングエンドソームに取り込まれた。次に、ウレアプラズマが細胞外に再度放出されるのか見当したところ、感染培養細胞エクソソーム画分にU. parvumが含まれていることを見出し、エクソソームマーカーとU. parvumの局在が一致することを見出した。さらに、エキソサイトーシスされたU. parvumは、新たな宿主細胞への二次感染能を有している事が確認された。これらのことは、宿主細胞に感染したU. parvumは、宿主細胞膜を利用ながら、免疫グロブリン等の宿主の免疫機構を回避している可能性を示唆していた。 また、26週早産由来のUreaplasma parvum OMC-P162株について、その全ゲノムを明らかにした。その結果、OMC-P162株には、新規の制限酵素ー修飾酵素系が存在する事が示され、この事がウレアプラズマ細菌自身の防御機構として働いている事が示唆され、細菌としての生存戦略ととっている事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、共同研究者の林らの開発した、マウス胚性幹細胞/多能性幹細胞(ES/iPS)から卵母細胞から始原生殖細胞(PGC)に誘導する技術、並びにその後胎仔卵巣由来の体細胞と共培養し、in vitroで卵の形成過程を再構築する技術移転を行った。誘導したPGCとメスE12.5由来の生殖巣の体細胞を調整し、5,000個のPGCと、50,000個の生殖巣の体細胞を培養し、凝集させ再構成卵巣をレチノイン酸存在下に作製した。その後、再構成卵巣を回収、調整した各種培地において培養し、3週間(in vitro differentiation)の培養の後2次卵胞の工程に進んだ。2次卵胞単離の工程は11日間(in vitro growth)行い、単離した。その際にはコラゲナーゼ処理し、タングステンニードルを用いた。さらにin vitro maturationの過程を経て、最終的には第1減数分裂の修了と共に第1極体を放出し、受精可能な卵子を形成させた。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroでマウス卵の形成過程を継続的に観察する方法の立ち上げを行った。この方法では、従来のマウス個体から卵子を採取する方法に比べて、各分化過程におけるウレアプラズマ感染の影響を観察する事が出来ると予想される。そこで、今後は再構成卵巣、2次卵胞、受精可能な卵子、及び受精卵の各段階でウレアプラズマを感染させる。各段階における遺伝子の発現への影響や、メチル化レベル等の解析を行う。 本年度明らかにしたウレアプラズマOMC-P162株の全ゲノム解析の結果から、そのゲノムサイズは732kbとウレアプラズマの中では比較的小型であり、GCコンテントは25%、予想された遺伝子数は587であった。さらに、これまで明らかにされた多くの細菌ゲノムとは異なり、およそ3分の1の遺伝子は機能不明である。宿主から多くの代謝物を取り込むことで生存している最小生物であるが故に、多くの必須遺伝子の欠失が行われる過程で、独自に遺伝子も改変させ生存に最小限必要な環境を得て来たものと推察される。新たな試みとして、ウレアプラズマの2次代謝物、あるいは1次代謝物の解析を始める。これらによって、これまで知られていないウレアプラズマの代謝経路(酵素)が明らかになると期待され、将来的な薬剤開発の為の基盤的なデータベースの作製につながることが期待される。
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