研究課題
多くの疫学的研究から、妊娠期における母体のウイルス感染、ストレス等の環境要因が、生まれてくる子供の思春期、成人期における統合失調症の発症と深く関わっていることが知られている。このことは、早期に診断・治療することにより、精神疾患の発症を予防できる可能性を示している。統合失調症などの神経発達障害の動物モデルとして、妊娠期に合成二本鎖RNAアナローグでToll-like 受容体のリガンドであるPoly I:Cと投与すると、マウス成熟期(10週齢以降)に統合失調症と類似した症状を引き起こすことが報告されている。本研究では、Poly I:CモデルにおけるKeap1-Nrf2シグナルの役割を調べると共に、統合失調症の予防を目的としたNrf2化合物スルフォアラファンの前駆体であるグルクロファニン(ブロッコリー等に含まれる化合物)を含む餌による早期介入に関する基礎研究を実施した。妊娠ddYマウスにPoly I:C (5 mg/kg/day for 6 days)を投与すると、生まれた仔マウスが成熟期になると認知機能障害を含む統合失調症様症状を引き起こすことを確認した。次に、生後4週から8週までグルクロファニン含有餌を食べた群、通常の餌を食べた群に分けて飼育すると、成熟期(10週齢以降)における認知機能障害、前頭皮質におけるパルブアルブミン陽性細胞の低下が起きないことを見出した。さらに、RNA-seq解析により、グルクロファニン含有餌による予防効果には、中心体(Centrosome)に関係している遺伝子群が関与していることを明らかにした。今回の知見は、小児期・思春期における栄養の重要性を示した研究成果である。さらに、今回の研究成果は、将来、精神病の高リスク児を対象とした早期介入臨床試験を視野に入れた、トランスレーショナル研究として期待される。。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究成果は、平成30年2月に国際誌に掲載されており、当初の研究計画以上に進展した。
今後は、同じ動物モデルを用いて、母親の栄養学の重要性について調べることを計画している。
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 2158
10.1038/s41598-018-20538-3.