研究課題
多くの疫学研究から、妊娠期における母体免疫活性化(例えば、ウイルス感染、ストレスや栄養低下による免疫系異常)が、生まれてくる子供の発達障害(自閉症や統合失調症など)の発症リスクを高めることが知られている。このような背景から、これらの発達障害の動物モデルとして、妊娠マウスに合成二本鎖RNAアナローグでToll-like 受容体リガンドであるPoly(I:C)が使用されている。すなわち、Poly(I:C)を妊娠マウスに投与すると、生まれてくる仔マウスが、自閉症様行動異常および統合失調症様行動異常を示すことが知られている。これまで、我々は、妊娠マウスにPoly(I:C)を投与して生まれた仔マウスの4週齢から8週齢まで、Nrf2活性化剤(スルフォラファン:野菜に含まれる抗炎症作用を示す化合物)を餌として与えると、10週齢時以降の行動変化(新規物体再認識テストによる認知機能試験)や組織化学的変化(前頭皮質におけるパルブアルブミン陽性細胞の低下)を予防できることを見出した。この結果は、2018年に国際誌に発表した。2018年度、スルフォラファンを含む餌を妊娠期から離乳時期(3週齢)まで与えると、生まれてきた仔マウスの自閉症様行動や統合失調症様行動異常が抑制されることを見出した。今回の知見は、小児期・思春期だけでなく、妊娠期の栄養の重要性を示した研究成果である。さらに、今回の研究成果は、発達障害の予防を目的とした、妊娠期の栄養学の重要性を提唱する重要な知見である。
1: 当初の計画以上に進展している
小児期・思春期の栄養の重要性に関する論文は、2018年にScientific REportに原著論文として発表した。またスルフォラファンを妊娠期から離乳時期(3週齢)まで餌として与えると、生まれてきた仔マウスの自閉症様行動や統合失調症様行動異常が抑制されることを見出している。現在、脳-腸相関の役割を検討中であり、計画以上に進んでいる。
2019年度は、前年度に採取したマウス糞の腸内細菌叢解析を実施し、栄養学による脳-腸連関の役割を調べ、論文発表を行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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