研究課題
自閉症スペクトラム障害は、3歳までに診断が付く発達障害である。統合失調症は、思春期、青年期に発症する代表的な発達障害であるが、発症前に認知機能障害などの前駆症状が観察される。しかしながらこれらの発達障害の予防に関する知見は殆どない。これらの発達障害の病因には、母体免疫活性化が関与しているという知見が蓄積されている。本研究では、妊娠期あるいは小児期・思春期の栄養が、成人期の精神病の発症に影響を与えるという仮説を、統合失調症の母体感染モデル(妊娠マウスにPoly(I:C)を投与)を用いて明らかにする。生体内で酸化的ストレスや炎症に対する防御機構として重要な役割を担っている転写因子Keap1-Nrf2系に着目し、Nrf2に作用する植物性機能物質sulforaphane (SFN)の前駆体glucoraphaninを使用した。統合失調症の母体免疫活性化モデル動物を用いて、小児期・思春期におけるglucoraphaninを含む餌の摂取が、生まれた仔マウスの成人期の精神疾患の発症を予防することを2018年に論文発表した(SCi REp. 2018)。今年度、同じ母体免疫活性化モデルを用いて、妊娠期から離乳時期(生後3週齢)までglucoraphaninを含む餌を摂取すると、思春期および成人期の自閉症および統合失調症の発症を予防できることを見出し、論文投稿を行った。また予備試験として、妊娠マウスにglucoraphaninを含む餌の摂取すると、生まれた仔マウスの腸内細菌叢に長期間に良い影響を与える所見を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
2019年度に論文投稿を行っており、当初の計画以上に進展している。
前年度、妊娠マウスへのグルコラフャン含有餌の摂取が、生まれた仔マウスの腸内細菌叢に長期間影響を与えるという知見を得たので、今後の研究として、妊娠期の栄養学と子供の精神機能との関連について調べる。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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