研究課題/領域番号 |
17H04247
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
尾内 康臣 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (40436978)
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研究分担者 |
横倉 正倫 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00529399)
武内 智康 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任助教 (20754188)
和久田 智靖 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (80444355)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでアルツハイマー病(AD)の脳内でミクログリア活性が上昇し、その上昇とアミロイド(Aβ)やタウ(tau)の脳内蓄積との関連を報告してきた。ミクログリア機能には傷害性(M1)/保護性(M2)があることが以前から指摘され、最近特にM2に関わる2型カンナビノイド受容体(CB2)刺激でAβやtauの除去や神経の生存効果があることが報告されている。これはM2を介してAD病因物質除去と神経細胞の生存と新生という新しい治療戦略の可能性を示唆している。本研究では、ADの病因物質とM2神経炎症と神経細胞の生存やシナプス密度を可視化する新しいin vivo画像化技術を確立し、新たな治療薬の開発を狙う。そこで本計画ではM2神経炎症に関連するAD病因物質の発現とニューロン・シナプス活性との関係を画像的に評価することを目指すため、マウスとサルのADモデル動物で下記の1~3の項目研究を行い検証している。 1)FKNのMRIシグナルを発生する分子プローブおよびCB2をターゲットにしたRIプローブを用いたM2標的in vivo画像化(前年度に引き続き施行)、2)マウスADモデルとサルモデルを用いたM2連関脳内環境変化とニューロン・シナプス活性のin vivo画像化(当該年度に施行)、3)創薬評価への研究展開(次年度への挑戦)。当該年度では、マウスADモデルとサルモデルを用いたM2連関脳内環境変化とニューロン・シナプス活性のin vivo画像化を行った。我々はこれまでcaspase-3/-7 等のプロテアーゼ様酵素の活性を画像化する蛍光イメージング技術を確立済であり、本研究ではそのプローブを改変し、FNK系を評価するMRIプローブを前年度と同様改良トライし、CB2に特異的に結合するRIプローブを合成し検証を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルツハイマー病のモデル動物としてAβ陽性SAMP10マウスを用いた。前年と同様にMRIプローブを用いた脳内分子動態解析技術を使って改良したが十分な脳内からのシグナルは得られず、MRIプローブの脳内移行にやはり問題があることがわかった。そのため、BBBを透過することが分かっているRI手法を用いて検討した。MG2細胞からM2細胞に誘導したセルラインを作成し、18F-FDGのRIプローブを用いた計測を行った結果、M2はM1よりもブドウ糖消費が少ないことがわかった。電子顕微鏡で観察するとM2誘導した細胞はswellingをおこし、cristaeの数が増えていること、M1誘導したときにはfragmentationが生じていることがわかった。RIプローブであるCB2系画像化評価系で解析し、M2ミクログリア優位を反映することがわかった。 SAMP10 AD類似マウスにおいて、CB2特異的結合の示すRIトレーサ([11C]NE40)の実験を行い、M2神経炎症の評価を行った。 [11C]NE40を尾静脈より投与後60分のダイナミック撮像を行い、simplified reference tissue model(SRTM)を用いて小脳を参照とする結合能(BPND)画像を作成した。また、病因物質との比較のため、[11C]PIBを用いてAβ蓄積の画像化を行った。トレーサーに関して静注後ダイナミック撮像を施行して、SRTMと小脳を参照とするBPND画像を作成して、両者の関係を調べることができた。これらの成果を論文としてまとめ投稿することができた。今後出版までに修正が行われると想像される。
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今後の研究の推進方策 |
論文報告に耐えうるように、引き続き前年度の研究を2019年度も継続し、データ取得と初期解析を本年度に完成させる。予備的検討として、MC-1に特異的に結合する[11C]BCPP-FEを用いて神経細胞活性を評価しているが、M2誘導したミクログリアでのミトコンドリア活性が高い予備結果がでている。本研究では、マウスの尾静脈からトレーサー静注後のダイナミック撮像を行い、2コンパートメントモデルを応用し、推定動脈inputカーブから得られた分布容積画像(Vt)あるいは標準化取り込み(SUV)画像を作成する。ミトコンドリア活性を測定する際にATP合成ではMC-1は律速段階酵素に当たり、その活性を調べることで電子伝達系機能すなわちミトコンドリア活性を評価できるが、最終のATP合成に関わる酵素はMC-Vであるため、この酵素活性を評価できるとされる[11C]MCV02を用いてイメージングを試みている。[11C]MCV02の合成が前年度にうまく行かず、今年度も試行継続する。FKN系またはCB2系の画像化のデータとともに、この[11C]MCV02を用いたMC-V活性を調べて、M2神経炎症との関係を同一個体で検討することを継続する。
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