研究課題/領域番号 |
17H04249
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
菱本 明豊 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (50529526)
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研究分担者 |
泉 剛 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (60312360)
白川 治 近畿大学, 医学部, 教授 (40243307)
曽良 一郎 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40322713)
朴 秀賢 神戸大学, 医学研究科, 講師 (60455665)
辻井 農亜 近畿大学, 医学部, 講師 (90460914)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ストレス / 神経科学 |
研究実績の概要 |
うつ病患者の最も深刻な転帰である「自殺」の早期発見・予防には、バイオマーカーの確立と生物学的病態機序の解明が不可欠である。我々は「自殺既遂に至ったうつ病患者の末梢血テロメア長が異常短縮している」事象及び自殺既遂者脳組織のテロメア長の異常短縮を明らかにした。我々は過剰な心理的ストレスからうつ病を発症し、自殺にまで至る負のスパイラルを制御する分子機序に迫るため、ストレスによるテロメア長の異常短縮の生物学機序の解明を目指し、本研究計画を立案した。 H29年度は、気分障害患者(うつ病・双極性障害)・健常者の末梢血テロメア長及びテロメア長とともに生物学的加齢やストレスの指標とされるミトコンドリアDNAコピー数を測定し、気分障害患者でのテロメア短縮及び、うつ病と双極性障害でミトコンドリアDNAコピー数の動態が顕著に異なることなどを確認した。一部の気分障害患者において光トポグラフィー(NIRS)も実施し、左前頭葉の酸素化Hb変化量とテロメア・ミトコンドリアDNAコピー数について強い相関がみられ、この知見はうつ病と双極性障害を鑑別する上でも非常に有用であることが示唆された。またマウス海馬由来神経幹細胞にストレス負荷の反映であるグルココルチコイドを投与すると、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)やテロメラーゼ活性が低下することを見出した。生物学的加齢と相関するゲノム構造の変化として末梢血のY染色体モザイク欠損の現象に注目し、男性自殺既遂者の一部にてY染色体モザイク欠損が有意に生じていることを見出し、テロメア短縮同様、ストレス・自殺リスクマーカー探索にも有用な知見として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体でのテロメア動態の測定、NIRSデータを併用した機能画像分野の知見の統合、神経幹細胞やストレスモデル動物といったin vitro, in vivo実験系でのアプローチ、自殺者におけるY染色体モザイク欠損など関連性の高いさらなる新奇の発見、など、多角的な研究が順調に遂行できている。自殺者・気分障害患者・健常対照者それぞれの試料の遺伝子発現・DNAメチル化解析も順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
①気分障害患者における自殺リスクや治療反応性のバイオマーカーの開発、②ヒト由来iPS細胞及びマウス由来神経幹細胞を用いたストレス→テロメア短縮の病態機序の解明、③テロメラーゼ活性を遺伝子工学的に増加させたストレス耐性強化モデル動物を用いた行動解析、④自殺者・気分障害患者などの臨床検体についての網羅的遺伝子発現・メチル化解析による創薬シーズ探索、を目指す。
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